欧州でオオカミ増加、懸念高まる 保護基準見直しも

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◆相次ぐ家畜の被害
 オオカミ増加にともない、欧州各国ではオオカミ襲撃による家畜の被害が相次いで報告されるようになった。

 スペインでは、2021年にオオカミの襲撃を1万560件数えたが、2022年にはさらに増え、前年比19%増の1万2898件記録している(フィガロ紙)。

 ベルギーでも、東部や北部で家畜が襲われる事件が増えている。すべてがオオカミであるという確証はないが、昨年末の数週間でも少なくとも35件発生した。また、ベルギー南側のフランスとの国境近くは人家が多く、オオカミが生育しやすい地域ではないが、そのあたりでも昨年複数回オオカミが目撃されている。(ラ・ヴォワ・デュ・ノール紙

 イタリアでも羊や子牛がオオカミに襲われる事件は定期的に報告されており、フランスで2022年にオオカミの犠牲となった家畜の数は1万2000頭に上った(20minutes紙)。

◆ヒトが襲われる事例も
 イタリアでは昨年、町中で犬の散歩中だった女性がオオカミに襲われたり、羊飼いがオオカミに襲われる事件も起きている。これらはまだ、イヌやヤギ、ヒツジを狙ったものと考えられるが、なかにはヒトを狙ったと思われる事件も皆無ではない。

 たとえば、2022年には、イタリアのフェッラーラ郊外ではサイクリングを楽しんでいた男性がオオカミに襲われ辛くも逃げたものの足を噛まれ軽傷を負った。また、昨年5月には海辺を散歩中だった4歳の女児が父親の目の前でオオカミに襲われる事件も起きている。

 さらに、今月には、フランスのスキー場でスキー客に交じってオオカミが駆け回る映像が撮られ、SNS上で大きな話題となった。これらは、オオカミの行動範囲が人里離れた山や森の奥に限られたものではないことを示している。

Text by 冠ゆき