ペットボトルの水からナノプラスチック、推定の10~100倍検出 健康リスク懸念

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◆PETなど7種のプラスチック特定
 研究者たちは、分子の振動を画像化できる新しいタイプの顕微鏡を使い、7種類の一般的なプラスチックのライブラリーに照らし合わせてナノ粒子を分析した。ペットボトルの材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)であったため、PETの微小粒子を発見しても驚かなかった。PETの量は、水をボトリングする前に通す逆浸透膜フィルターに使われるナイロンの一種であるポリアミドの量と比べ、少なかった。

 そのほか、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレートが微量に含まれていることを確認した。しかし、分析したナノ粒子のうち、これら7つの既知のプラスチックのいずれかに分類できたのは、わずか10%であった。残りのナノ粒子の由来は明らかになっていない。

 コロンビア大学化学科博士課程に在籍する主執筆者のナイシン・チィェン氏は「ほかの研究結果から、ボトル入り飲料水に含まれるマイクロプラスチックの大半は、一般的にPET(ポリエチレンテレフタレート)由来のプラスチック製ペットボトル本体から漏出したものだろうと予想していました。実際には、水のペットボトルには多種多様なプラスチックが含まれていることがわかったのです」と言う(CNN、1/8)。

 PETの粒子は、ボトルのキャップの開閉を繰り返したり、ボトルを押しつぶしたり、車の中などで熱を加えたりすることで壊れることが研究でわかっている。

 ナノプラスチックが特定・分類できるようになった今、あらゆる疑問に対する答えを研究することが可能になった。たとえば、ボトル入りの水に浮遊しているナノプラスチックがボトルそのものに由来するものでないとしたら、それはどこから来たのだろうか?

 コロンビアの研究チームは、ほかのナノプラスチックは、おそらく製造工程の一部によって汚染された原水に由来するのではないかという仮説を立て、調査している(CNN)。

 このようなナノプラスチックへの暴露を避けるのは非常に難しい、とCBSニュースの医療寄稿者でKFFヘルスニュースの公衆衛生担当編集長であるセリーヌ・ガウンダー博士は言う。プラスチックはペットボトルから摂取するあらゆる飲料に含まれる可能性があり、食料供給源や環境にも存在しているからだ。(CBSニュース、1/10)

 「鉛管などがあるような地域でない限り、水道水が一般的に安全です」「浄水器のなかには、ほかのプラスチックを混入させるものもあるので、水道水を直接飲んだほうがいい」とガウンダー氏は言う(同)。

 コロンビア大学の研究では水道水のサンプルは分析されていないが、過去の研究では、水道水中のマイクロプラスチック粒子の濃度はボトル入り飲料水よりもはるかに低いことが判明している。ヤン氏は「その点についても、我々は調査している」とした。(CNN)

 プラスチックの微小な破片が人にとってどれほど危険なものであるかについて、研究者はまだわかっていない。コロンビア大学のチームは、ほかの研究機関とも協力し、人体組織中のナノプラスチックを測定し、健康への影響についての解明に乗り出した。プラスチックの人体への影響に関する研究は、まだ始まったばかりである。科学者が人体や臓器にプラスチックが存在することを確認したのはごく最近のことだ。

Text by 中沢弘子