フランス、家庭の生ごみの堆肥化が義務に 温室効果ガスを削減

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◆都市へのコンポスト用ごみ箱設置加速へ
 エネルギー移行省は、2024年までに人口の40%に相当する2700万人に戸別収集あるいは自宅近くまたは地域のコンポスト回収所による生分解性廃棄物の分別方法が提供されるようになると言及した。しかし、NGOの「ゼロ・ウェイスト・ヨーロッパ」は1日、「実際には3人に1人以下しか、自分の住む地域でコンポストの利用ができないだろう」と反論。さらに、「この措置については2015年から認知されていたが、導入が遅れており、明らかにそれは自治体と国の双方の政治的意志の欠如の表れだ」と非難する。(rfi、1/1)

 パリでは、イタリアのミラノと同様に建物からの廃棄物回収を試みており、うまく機能しているが、回収率は低い。その代わりに、2024年末までに、パリ市民が皮をむいて生ごみを捨てたりするために、約500個の生分解性用のごみ箱を路上に新設する予定だ。フランス第2のエクス・マルセイユ都市圏では、190万人の住民のために屋外集積所がすでに試験的に活用されており、2024年までにほかの集積所も順次設置される予定になっている。リヨン都市圏は2021年よりこの取り組みを実施している。人口140万人の同市には、堆肥化ステーションが150メートル間隔で設置され、これまでに合計1300ヶ所が設置された。(同)

◆EU、温室効果ガス削減に向け、生ごみ堆肥化を推進
 今回の措置の導入の大きな要因となったのは、家庭ごみの3分の1近くが有機性廃棄物であるという憂慮すべき事態だ。有機性廃棄物はほかの種類のごみと混ざった状態で埋立地や焼却炉で処理されることから、メタンや二酸化炭素(CO2)といった温室効果ガスの発生につながる。

 欧州委員会によると、食品廃棄物だけで、EUの食料システムから排出される温室効果ガスの排出量の約16%を占めている。国連の発表によれば、食品ロスや廃棄物は、人類が引き起こす温室効果ガスの年間排出量の約8%を産出している。

 EUでは生分解性廃棄物の回収率は34%(2018年時点)にとどまり、潜在的な土壌養分の損失につながっている。フランスでは毎年、1人当たり推定82キロの堆肥化可能な廃棄物が廃棄されている。(エートス、1/4)

 また、有機性廃棄物による紙、プラスチック、ガラスなどのリサイクル可能な材料への汚染も、フランスが推進する一つの要因になっている。

 フランスの取り組みは、生分解性廃棄物の回収を奨励する、より広範なEU廃棄物管理に関する法的枠組みを制定した指令に準じている。EUの廃棄物枠組指令では、今年から生分解性廃棄物の回収が奨励されているが、強制的な目標設定には至っていない。

 欧州諸国では自治体レベルの有機性廃棄物の分別がすでに実施されている。イタリアのミラノは、2014年より家庭用の生ごみ回収プログラムを実施。各家庭に専用のごみ箱と堆肥化可能な袋が配布され、この取り組みが始動した。オーストリア、オランダ、ベルギーでは、分別ごみ箱と家庭での堆肥化が普及している。イギリスは、2023年に生ごみの分別収集を開始する計画を発表した。イングランドでは一般家庭の分別は任意だが、ウェールズと事業主に対してはより厳格に実施されている。(ユーロニュース、1/2)

Text by 中沢弘子