なぜアップルが動物愛護団体の「今年の企業」に選ばれたのか?

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◆PETAが選ぶ「今年の企業」
 PETAはそのミッションを普及させる活動の一環として、毎年、「今年の人」と「今年の企業」を選出している。そして2023年の「今年の企業」に選ばれたのがアップルだ。アップルは時価総額において世界最大の企業。コンシューマーエレクトロニクス企業のアップルと動物愛護は一見結びつかないようにも思えるが、PETAが「今年の企業」としてアップルを選出したのは、同社が今年の9月、レザー使用をやめたことを発表したからだ。同社は、アップルウォッチのバンドやケースの素材をレザーから、レザーのバックスキンに似たようなリサイクル素材のファインウーヴン(FineWoven)に切り替えた。アップルの取り組みは、2030年までにすべての商品をカーボンニュートラルにするという目標を達成するためのものだが、PETAはこの取り組みを脱炭素の取り組みであると同時に、牛を保護するという取り組みであるとして表彰した。100万のiPhoneケースを作るために、牛2500頭分のレザーが使用されていたとの推計もある。クオーツによれば、いわゆるヴィーガンレザーと呼ばれる皮の代替品市場は伸びつつあり、昨年の市場規模は約6200万ドル(89億円)で、2030年までに毎年10%成長すると見込まれている。

 過去に「今年の企業」に選ばれたのは、代替シーフード商品を展開するグッド・キャッチや、代替肉のビヨンド・ミートなど、サステナブルな取り組みを推進する企業が選ばれたほか、イベントでの肉の扱いをやめると発表したウィーワークなども選ばれている。気候変動対策の重要性がますます高まるなか、カーボンニュートラルに向け積極的に取り組む企業が増えている。PETAが啓発するような動物虐待の問題に直接関与していなくても、アップルのようにヴィーガンレザーを導入するなどで、地球にも動物にも優しい企業が今後増えていくことに期待したい。

Text by MAKI NAKATA