包装資材の製造業者からリサイクル料徴収、米で動き 業界は反発

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 アメリカの一部の州では、包装材製造者に廃棄費用の負担を求める新たなリサイクル制度を導入する動きがみられる。一方で関係業界は、この流れを阻止しようと躍起になっている。

 メイン州では民主党のジャネット・ミルズ知事が7月、包装材関連の素材を生産する事業者に対し新設された州基金への支払いを義務付ける法案に署名。同州はこうしたプログラムを導入した全米初の州となった。同基金を活用することにより、リサイクルや廃棄物管理にかかる費用が州に還流される。

「環境立法者の全国コーカス(National Caucus of Environmental Legislators)」で環境衛生マネージャーを務めるインカ・ボーデ・ジョージ氏によると、オレゴン州では民主党のケイト・ブラウン知事が署名すると同様の法案が成立するほか、少なくとも6つの州議会で類似法案が審議されようとしている。また、4つ以上の州議会が立法化に関心を示しているという。

 法案提出に向けた動きが活発なのは民主党寄りの州が多く、ニューヨークやカリフォルニアといった影響力のある経済圏もこれに含まれる。これらの州で活動していた環境保護主義者は、かねてより包装材の廃棄費用を負担する主体を国民から生産者に移すべきだと考えていた。

 メイン州で成立したような法律がもっと増えれば、初期の段階から産業界が過剰な包装材の製造をやめる誘因になるだろうとした上でボーデ・ジョージ氏は、「一回使っただけで捨ててしまうという文化にも一部問題がある。素材生産者が本当の意味で所有者となることが大事だ」と述べている。

 メイン州の法律では、「生産者支払金」と呼ばれる制度を義務付けることでプラスチック、段ボール、紙その他包装材の廃棄物削減につなげる仕組みとなっている。企業は独自のリサイクル施策を実施したり、包装材を減らしたりするだけでも支払金の減額が可能だ。関係する民間団体に集められた資金は、州がリサイクルや廃棄物管理する費用に充当されるほか、包装材削減やリサイクル促進を目的とした教育に投資されることになる。

 オレゴン州の法案では、包装材の生産者・製造者に対し、資材のリサイクル計画を策定する非営利団体を設立するよう義務付けているところが他州とは異なる。

 こうした考え方を提唱する人たちによると、メイン州のような動きは「拡大生産者責任」と呼ばれ、ヨーロッパのほかカナダの一部の州で広く浸透している。バージニア州に本拠を置く業界団体「全米廃棄物処理・リサイクル協会(National Waste & Recycling Association)」は、リサイクル可能なものには買い手が必要となるため、「リサイクル素材を対象とする新たな市場を創出するインセンティブ」に特化したプログラムへの支持を表明している。

 広報担当のブランドン・ライト氏は、「もっとも大事なのは、リサイクル市場があることだ」と話す。

 ところがこうした動きは、アメリカ産業界の複数のセクターから大きな反発を招くこととなった。新法の成立により、一部の州では業務運営費の増加につながるという不安が広がっているためだ。新たなリサイクル関連の義務を課された企業が州から撤退したり、追加費用を消費者に転嫁したりする可能性を業界関係者は指摘している。

 包装資材業界を代表する団体「AMERIPEN(American Institute for Packaging and Environment)」のエグゼクティブ・ディレクターであるダン・フェルトン氏によると、同団体はミルズ知事に法案への署名を拒否するよう求めていたものの、今後の制度設計に際しては積極的な役割を果たしていく予定である。

 AMERIPENでは別の新たなリサイクル制度の導入に向けてメイン州と協議する意向を持っていた。今回の新法成立によって「生産者と州民は蚊帳の外に置かれ、州環境保護局が制度の費用を負担せざるを得なくなった」とフェルトン氏は語る。

 また、提案されたリサイクル法に対しては、包装業に直接関わっていないものの包装材に依存している業界からも反発を招いている。ガーデン製品の販売会社スコッツ・ミラクル・グローで政府関係マネージャーを務めるロバート・ルリア氏は、「今回の法律はメイン州のリサイクル制度をさらに非効率にする可能性がある」と指摘する。

 とりわけプラスチックのリサイクルについては、中国が外国からのプラスチック廃棄物の受け入れを停止したことにより、状況が複雑化している。

 法律の支持者は、リサイクル新法により使い捨てプラ製品への依存度が下がるため、廃棄物処理問題の解決に役立つだろうとしている。メイン州天然資源協議会のサラ・ニコルズ氏は、「州法の成立により明らかになったのは、大企業やブランド企業がプラスチック汚染の抑制や無駄な包装物の削減に向けて、それぞれの役割を果たすべき時代が来たということだ」と話す。

 メイン州においては、法案に反対していた業界の代表者たちも時代の変化を理解するようになっており、共存可能な制度の設計に向けて州と行動をともにしている。

 メイン州食料品・食品製造業者協会(Maine Grocers & Food Producers Association)のエグゼクティブ・ディレクターであるクリスティン・カミングス氏は、「メイン州の動きに他州も続くよう、産業界は準備を進めている。今回の動きは、新たな制度がメイン州のほか、アメリカ全土でどのように発展していくかの始まりにすぎないと考えている」と語る。

By PATRICK WHITTLE Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP