「ベネチアを守れ」クルーズ船の再来に環境団体、著名人らが「NO」

Antonio Calanni / AP Photo

◆「ベネチアのための十戒」
 これに先立ち、6月頭には、世界の著名人・文化人らが、マッタレッラ大統領や文化観光大臣、ベネチア市長に宛てて連名で公開書簡を発表している。そのタイトルは「ベネチアのための十戒」というものだ。著したのは、ミュージシャンのミック・ジャガー、映画界のフランシス・フォード・コッポラ、ジェームズ・アイヴォリー、ウェス・アンダーソン、英国女優ティルダ・スウィントン。そこにベネチア・ヘリテージ財団の呼びかけで、世界の美術館長や大学長、またその関係者らが賛同を表明した。そのなかにはニッセン元フランス文化相も含まれる。

 この書簡のなかで、発起人らは「ベネチアには物理的な保護だけでなく、文化的アイデンティティを守る法令が必要」と考え、「芸術的遺産を保存すると同時に、ベネチアの魂である市民生活も守るべき」と主張する。その目的を達成するためのポイントとして挙げた10点には、大型船の往来の完全な停止や、オーバーツーリズムを避けるための策、水上交通の新しい管理方法などが含まれている。(コリエーレ・デラ・セーラ、6/2)

 パンデミックで減速した経済は、ベネチアに吉と出るか凶と出るか。世界中から期待と憂いの目が注がれているようだ。

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Text by 冠ゆき