「ベネチアを守れ」クルーズ船の再来に環境団体、著名人らが「NO」

Antonio Calanni / AP Photo

 イタリア、ベネチアに17ヶ月ぶりに大型クルーズ船が入港。経済活動再開の象徴ととる向きもあれば、環境や文化保護の観点からは激しい抗議の声も上がっている。

◆クルーズ業界「経済復興に貢献」、反対派「世界遺産を傷める」
 ギリシアから来た大型クルーズ船MSCオーケストラは3日、ベネチアに入港した。その2日後、約650人の客を乗せ、ギリシア、クロアチア方面に向けて出発した。MSCオーケストラの営業再開にあたり、クルーズライン国際協会(CLIA)のガリエッティ会長は、新型コロナで停滞したベネチア経済を引き上げる役に立ててうれしいというコメントを発表。パンデミックが原因で「クルーズ業界は、1年で80万人の乗客、つまり10億ユーロを失った」と述べた。(20 Minutes、6/5)

 しかし、環境団体や文化保護団体はこれに強く反発し、停泊するクルーズ船の周囲で「NO GRANDI NAVI(クルーズ船反対)」と記した旗を手に、小型モーターボートなどを用いてデモを行った。彼らの言い分は、巨大な船が通ることで起きる強い波が世界遺産でもあるベネチア旧市街の建築の基礎を傷め、ベネチアの水域の生態系を脅かすというものだ。(同上)

 実はイタリアは、クルーズ船は世界遺産区域の外の地域に停泊しなければならないと今年の春定めたところだ。これは、5月12日付の法令にも明記されている。しかし、その実行には、代わりとなるターミナルが築かれている必要があり、それにはまだしばらくはかかる見通しだ。そのため、「何一つ改善されていない」と反対派のカッチャリ氏は憤慨する(フランス・アンフォ、6/5)。

Text by 冠ゆき