オーバーツーリズムよ、さらば コロナ後見据えるイタリア

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 パンデミックの影響で、観光業は世界的に丸一年停滞し続けている。国連世界観光機関(UNWTO)によれば、2020年に国境を越えた観光客は74%もの減少を記録した。そのようななか、かつてオーバーツーリズム(観光公害)に悩んだベネチアやフィレンツェで、アフターコロナを意識した動きが見られる。

◆大型クルーズ船乗り入れを禁止したベネチア
 イタリア政府は3月31日、大型クルーズ船の停泊場所を、マルゲーラに限ることを決めた。マルゲーラは、ベネチアの工業港だ。この決定は、「イタリアと世界の文化歴史遺産を守る」ことを理由にしている。つまり、湾に突き出したベネチア旧市街に、大型クルーズ船が直接近づくのを禁止したのだ。

 ベネチアでは、数年前からクルーズ船による運河へのダメージが問題視されていた。たとえば、2019年6月には、ベネチアのジュデッカ島で大型クルーズ船が埠頭と小型船に衝突し怪我人を出している。しかし、「一年に1100万人の観光客と(中略)3億ユーロ近い経済的利益を背景に、ベネチア市は具体的な対策を何一つ取ってこなかった」(レ・ゼコー紙、3/27) という背景がある。パンデミックにより観光客が途絶えたいま、ようやく歴史的文化遺産の保護に焦点があてられたわけだ。

Text by 冠ゆき