世界的に注目浴びる「ジェンダーレンズ投資」 投資によって女性活躍推進
◆多様なジェンダーレンズ投資戦略
一口に「ジェンダーレンズ投資」といっても、さまざまな投資戦略があり、投資家のニーズや興味によって異なる投資方法を用いることが可能である。投資戦略は大きく分けると、1)女性が保有している、または女性が経営している企業に投資、2)女性に影響を与える商品やサービスを提供している企業に投資、3)ダイバーシティに力を入れている企業に投資、4)サプライチェーンに女性が経営する会社を積極的に含めている企業に投資する、の4つからなる。
ヴェリス・ウェルス・パートナーによると、公的に入手可能な「ジェンダーレンズ投資」商品の半分以上は女性の経営陣・取締役、またはダイバーシティに力を入れている企業への投資に集中しているという。「ジェンダーレンズ投資」による影響だけとは言えないが、女性の取締役は米国では増加傾向にある。世界5大エグゼクティブサーチの一社スペンサースチュアートによる米国取締役インデックスによると、スタンダード&プアーズ(S&P)100総合指数構成企業における女性取締役比率は28%で、これは2019年の26%、2019年の16%と比べて大きく伸びている。
またプライベートエクイティー、ベンチャー・キャピタル業界では、近年多くの「ジェンダーレンズ」ファンドが立ち上がっている。米ウォートン大学の研究Project Sage 3.0によると、2019年末で138もの「ジェンダーレンズ」ファンドが設立されている。投資戦略として、ファンドの多くがジェンダーを投資分析の一つの要因として取り入れる、またはジェンダーに関連する指標をターゲットとして使っている。また総ファンド数の内38%は北アメリカを投資ターゲットとしているが、2番目に大きいターゲット地域がサブサハラアフリカなのが興味深い。
◆国内におけるジェンダーレンズ投資
安倍前首相は「ウーマノミクス戦略」を提唱、「女性が輝く社会」を実現すると公約した。それにもかかわらず、日本における男女格差問題は進展していないどころか、状況は悪化しているとの指摘もある。2019年12月に発表された世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」によると、日本は153ヶ国中121位と最下位レベルだ。前年よりもランキングを11位落とし、ほかの先進国に比べても男女格差は最下位レベルにある。
そんななか、国内における民間資産運用会社は近年さまざまな「ジェンダーレンズ」関連の金融商品を導入している。大和アセットマネジメントの「女性活躍応援ファンド(椿)」、明治安田の「女性活躍推進ファンド」がある。また新生企業投資は子育て関連事業に投資するファンドを運用している。
さらに世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による女性活躍の視点を入れての資産運用は世界的にも注目を浴びている。GPIFは2017年にESGの「S(社会)」をテーマとしたジェンダー指数MSCI日本株女性活躍指数(WIN)を採用し、このニュースは世界的に取り上げられた。昨年12月には新たにMorningstar 先進国(除く日本)ジェンダー・ダイバーシティ指数(GenDi)を導入。この指数はオランダのジェンダーデータ企業Equileapのジェンダースコアを用い、1)経営陣・従業員のジェンダーバランス、2)報酬の平等性とワークライフ・バランス、3)ジェンダー平等に関する企業方針、4)企業のコミットメント・透明性・説明責任、5)セクシャルハラスメントや男女差別など問題の基準でスコアがつく。
◆まとめ
現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大により、よりジェンダー格差が拡大することが懸念されている。今後持続的な世界経済の再生そして発展に向けて、女性の社会進出および男女格差の解消が必要だ。
WEFによると、国内においていわゆるジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)を実現することによって、日本のGDP(国内総生産)は5500億ドルも増加すると推定されている。
「ジェンダーレンズ投資」は女性活躍推進にとって重要なツールの一つであると言えよう。
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