新型コロナはインパクト投資の転機となるか

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 世界的に新型コロナウイルス感染が拡大するなか、インパクト投資が推進する持続可能な成長に関心が集まっている。

 今年6月に出版されたインパクト投資を推進する米国非営利団体Global Impact Investment Network(GIIN)の2020年版調査レポートによると、世界のインパクト投資額は2019年末で7150億ドルに及んだ。前年の投資額5020億ドルと比べても急成長を遂げていることがわかる。

 同レポートによると、調査に答えた投資家の多く(57%)はすでにインパクト投資へ出資する予定だった資金額を変更する「可能性は低い」と答えている。また15%の投資家はインパクト投資への資金額を増加する「可能性が高い」と答えている。

 この背景には、新型コロナウイルスによる経済低迷が続くなか、男女格差や貧富の差などの社会的リスクや企業の脆弱性がより明確になったこと、新型コロナウイルス拡大後のESG(環境・社会・企業統治)投資ファンドの高パフォーマンス、そして持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえたより持続的な経済回復および成長の一つの手段として、投資家などからインパクト投資により期待がされていることが考えられる。

新型コロナウイルスによってリスクが明確に
 新型コロナウイルスは世界経済に大きな打撃を与え、長期的な影響が懸念されている。社会的に見ると、先進国においてはとくに若者、女性、マイノリティー、低賃金、パートタイムの労働者への影響が多いことが英国NGO オックスファムの調査で明らかになっている。世界銀行は、新型コロナウイルスにより世界で7100万人の人々が極度の貧困状態に陥る可能性があると発表した。貧困者の多くはすでに貧困で苦しむ東南アジアやサブサハラアフリカの国々に居住すると見られている。

 企業においては、新型コロナウイルスにより脆弱性が明らかになったと言えるだろう。従業員のリモートワーク体制、IT戦略などはもちろんのこと、本来財務諸表には公表されていないリスクが企業には多くあることが露呈した。

 最近「レジリエンス」という言葉がよく聞かれるようになった。これは日本語では「回復力」「復元力」などと訳されるが、社会や企業においては危機を柔軟に乗り越えて成長する力を指す。今後新型コロナウイルス危機を乗り越え、よりいっそうの成長を遂げるには、いま現在重要視されている社会問題や企業リスクを考える必要があるのではないだろうか。

Text by 中川沙和