新型コロナはインパクト投資の転機となるか

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ESGファンドの高パフォーマンス
 そんななかで、新型コロナウイルス感染症流行後のESGファンドの高パフォーマンスが注目を浴びている。新型コロナウイルスがもたらした混乱によって、投資家がより持続可能性が高く、市場ショックに強くまさに「レジリエンス」な投資先を探していることがESGファンド買いに影響していると思われる。

 米国モーニングスターによると、今年4月から6月にかけて世界のEGSファンドの資産増加額は700億ドルに及び、資産運用額は1兆ドルを超えた。また、2020年の第1四半期中に欧州サステイナブルファンドの資産増加額は約300億ユーロに及んだ。逆に、同期の欧州ファンド全体による資金流出は1480億ユーロであった。

 新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、今年2月から3月にかけて世界的株式市場は暴落した。いわゆる「コロナショック」だ。米国モーニングスターのデータによると、3月にMSCIワールドインデックスは14.5%も下落した。しかしその間、世界ESGファンドの62%はベンチマークを上回ったという。

 ESG投資は財務諸表に現れない経営体質やリスクを明らかにし、長期的な投資レンズで企業価値を評価する。新型コロナウイルスは、投資家や企業がESG要因を重視することが結果的に経済的なリターンにつながることを証明したと言える。

持続的な経済回復への期待
 新型コロナウイルスがもたらした危機は、今後の社会や企業のあり方を根本的に見直す転機とも考えられる。

 今年1月、新型コロナウイルス蔓延の前に行われたダボス会議では、世界経済フォーラム会長クラウス・シュワブ氏がステークホルダー重視の資本主義について語った。新たに改定され採択された『ダボス・マニフェスト2020』のなかで、「企業の役割は共有し持続的な価値の創出において、すべてのステークホルダーを重視することである」とシュワブ氏は述べている。すべてのステークホルダーには、株主だけではなく、従業員、顧客、仕入れ先、地域、そして社会が含まれているのが重要なポイントだ。

 文頭でも述べたGIINは、レスポンス(対応)、リカバリー(回復)、レジリエンス の3つのRから名付けられた「R3 Coalition」と呼ばれるプロジェクトを今年5月に始動した。これは、インパクト投資家の有志が集まり結成された。インパクト投資資金を動員し、より効率よく調整することによって、新型コロナウイルス危機に対応しているインパクトの高い投資案件に速やかに資金配給をし、資金不足を埋めることを目指している。

 インパクト投資家はこれまで世界におけるさまざまな問題に投資を通じて関わってきた。「この危機がもたらす幅広い波及効果に対処するには、いままで以上にインパクト投資家がより有力な役割を担う必要がある」とGIINは述べている。

 先日出版されたR3 Coalitionのレポートによると、インパクト投資家は投資先企業への短期支援を長期的視点で行っている。また多くのインパクト投資家は、新型コロナウイルスで浮き彫りになった社会的不平等の問題に着目しており、長期的には新たな投資戦略や投資商品が必要だとしている。

 新型コロナウイルスによって世界の多くの人が危機的状況にある。それを好機と捉え、表面化したリスクを元に、今後すべてのステークホルダーにとってよりよい経済・社会を作る機会があるのではないか。持続可能性の高い企業に投資するインパクト投資によるポスト・コロナ社会への貢献度は高いであろう。

 国連によると、持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成するためには毎年2.5兆ドルの資金が不足していると言われている。より持続可能な社会に向けて、今後さらにインパクト投資が拡大することを期待したい。

Text by 中川沙和

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