「数十年に一度」の大雨がなぜ毎年……地球温暖化のしくみから考える

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◆地球上における二酸化炭素循環
 人類が石油や石炭の化石燃料を使う前、地球上においては、二酸化炭素は基本的に水や酸素と同様に、増えもせず減りもせずうまく循環していた。それが地球化学的規模の循環と生物学的規模の循環だ。

1)地球化学的循環
 これは、数百万年オーダーの変動を指している。二酸化炭素は気体なので、大気中に存在するが、それ以外にどこにどのような形で蓄積されているのか。それは炭酸カルシウム(CaCO3、カルシウム塩)となっていて、よく知られた石灰石だ。それ以外に貝殻、サンゴなども炭酸カルシウムからできている。もちろん、カルシウム塩以外に、マグネシウム塩やナトリウム塩(一般的に炭酸塩という)にもなっている。二酸化炭素は、水に溶けると炭酸(炭酸清涼飲料水のもと)になり、やがて炭酸塩となって固体になる。火山の爆発により、二酸化炭素が大気中に出てきて、二酸化炭素は、また水に吸収される。このようなサイクルは地球化学的規模の循環だ。鍾乳洞や鍾乳石がどうしてできるのか、そのメカニズムはこの地球化学的炭素循環と密接に関係している。

2)生物学的循環
 植物は、大気中の二酸化炭素と水から、光合成により澱粉を作っている。このとき、酸素が発生、動物は酸素を吸って二酸化炭素を吐いている。このように、二酸化炭素や酸素は、バランスよく循環している。植物や動物の残存物は分解し、このときにも二酸化炭素が発生する。この生物学的循環は、数万年オーダーの変動だ。植物や動物の残存物は、長い年月(数億年)をかけて石炭や石油になっていることはよく知られている。

◆人為的、非循環的な二酸化炭素発生が大問題
 人類はエネルギー獲得のため、石炭や石油を使ってきた。その石炭や石油は有機化合物からできているため、これを燃焼させれば二酸化炭素と水が発生するのは当たり前だ。人類は、地球化学的や生物学的二酸化炭素循環に比べて、微々たる短期間、過去200年の間に、一方的に二酸化炭素を排出した。その排出された二酸化炭素をリサイクルする術(人工光合成など、研究は行われている)を不幸にもいまだに知らないので、二酸化炭素は大気中に溜まるだけだ。この人為的かつ非循環的な二酸化炭素の発生は、自然の摂理に反していることは言うまでもない。これをどう防ぐかが大きな問題だ。

 我が国の2018年度の部門別二酸化炭素排出量(直接排出量)は、エネルギー転換部門(発電所など)40.1%、産業部門(工場等)25.0%、運輸部門(自動車等)17.8%、業務その他部門(商業・サービス・事業所等)5.6%、家庭部門4.6%、工業プロセス(石灰石消費等)4.1%、廃棄物(廃プラスチック、廃油の焼却)2.5%、農業、その他0.3%、間接排出量は、それぞれ7.9%、35.0%、18.5%、17.2%、14.6%、4.1%、2.5%、0.3%だ。この数値から明らかなことは、まず発電所、工場、自動車からの二酸化炭素の発生量をどう抑えるか、そのためには、間接的に工場、事務所、家庭などの電気消費量をどう削減するかが重要だ。

 原子力発電は化石燃料を使わない発電として脚光を浴びてきたが、不幸にも福島第一原子力発電所の事故が発生してしまった。

Text by 和田眞