3D印刷でサンゴを作成 エネルギー生産、サンゴ礁再生に期待 ケンブリッジ大ら

バイオニックサンゴ中の微小藻類の電子顕微鏡画像|Daniel Wangpraseurt / University of Cambridge

◆高速3Dプリント技術でバイオニックサンゴを作成
 研究チームはバイオニックサンゴ作成にあたり、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)と呼ばれる光の干渉を使った測定方法を使用して、生きたサンゴをスキャンし、高速3Dプリント技術で印刷した。この技術はマイクロメートルスケールの解像度でわずか数分で印刷できるため、藻類の細胞を生きたまま埋め込むことができる。

 バイオニックサンゴは、生体適合性(生きた組織になじむ性質)を持つヒドロゲル(水分を含むゼリー状のゲル)で構成され、生きた藻類細胞とナノセルロース(植物細胞などの主成分であるセルロースを小さくしたもの)が埋め込まれた。セルロースは環境中に豊富にあり、光を吸収してあらゆる方向に放出する性質を持つことから、藻類に光をより多く供給するために使用された。 

 そして研究者らはバイオニックサンゴの表面に、サンゴの触手として機能する小さな円柱状の構造を作成した。この円柱形状が広い表面積を持つことから、藻類が光を多く吸収し、光合成効率が上昇した。研究者らが、さまざまな種類の微細藻類をテストしたところ、天然サンゴより100倍はやく藻類が成長したことが確認された。

◆持続可能なエネルギー生産とサンゴ礁再生に貢献する可能性
 3D印刷されたバイオニックサンゴは、さまざまな用途を持つ。そのひとつが、藻類ベースのバイオ燃料を生産するコンパクトで効率的なバイオリアクターの開発だ。研究チームはすでに会社を立ち上げており、サンゴに触発された光の収集方法を使用して、発展途上国でバイオ製品用の藻類を栽培している。

 もうひとつが、サンゴ礁を修復および再生するための新しい技術開発への貢献だ。研究チームは今後、藻類とサンゴの共生関係の理解を深めていき、調査結果をサンゴ礁再生プロジェクトに役立てることを最終目標に掲げている。

 持続可能なエネルギー生産とサンゴ礁再生に貢献する可能性を持つ、バイオニックサンゴのさらなる研究が期待される。

Text by クリューガー量子