「グレタ世代」怒れる若者たちが世界で立ち上がる 温暖化問題に熱

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 16歳のスウェーデンの少女は、チリから急な予定変更で大西洋を横断し、ヨーロッパに帰ることを決断した。12月2日から13日にかけてマドリッドで開催された国際会議に参加した政府関係者、科学者、環境運動家に対し、高い要求を突きつけたことになる。

 スペインに行くのに断固として飛行機を拒否したことは、グレタ・トゥーンベリさんがこれまでに創り出してきた世界的な抗議活動における重要なメッセージである。また一方で、彼女の活動に追随する人々の真剣さの表れでもある。

 11月下旬、数十万人にも及ぶ若者を中心とする人々が世界中の都市に集まり、政府に対して気候変動を抑えるためのさらなる取り組みを要求した。

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 ラ・バガボンド号に乗って大西洋をわずかな乗組員たちとともに航行したグレタさんも、同じ気持ちでマドリッドの国際会議に参加したのだろう。世界のリーダーたちに、地球温暖化がもたらす最悪の事態から若者世代を守るためには何をすべきかを、再び問いかけた。

 ニューオーリンズにあるラスターチャーター高校の生徒、アウグスト・ウィートフェルトさんにとって、グレタさんは精神的な支えとなった。過去の世代がいかに持続可能でない方法で資源を使い尽くしてきたかを、彼女は強調してくれたという。

「短期的に得られる結果など、ひどいものにすぎない。私たちの世代、そして後に続く世代がその結末を甘受しなくてはならないから」と言う。

 アウグストさんが恐れているのは、気候変動が1930年代のように大きな経済問題、社会問題の引き金になるのではないかということだ。当時は極度の干ばつにより、アメリカ中部の農家が西部に大量移住することになった。

「土地の損失を防ぐために立ち向かわないのなら、また同じことが起きるだろう。そのような事態を避けるため、いま行動を起こさなくてはならない」と訴える。

 環境行動を起こす生徒たちが集まるSEAクラブのメンバーとともに、アウグストさんはミシシッピ川沿いにある公園でゴミ収集の手伝いをしている。

 海を隔てたアフリカ、ナイジェリアのラゴスでは、ジェニファー・セルファさんが学校の環境保護団体でこうした実践的な精神を共有している。「気候変動を抑えるために私が取り組んでいるのは、木を植えることです」と15歳のジェニファーさんは話す。

 教師のビクトリア・エベスナン氏によると、生徒たちは気候変動に対する無知をなくす取り組みに協力しているほか、環境を守る必要性について、英語ではなく現地の言葉でメッセージを広めている。

 ワシントンを本拠とする環境保護団体「世界資源研究所」のアンドリュー・ステア所長は、ここ数年、気候変動の議論では認知の高まりが大きな話題になったと指摘する。

 ステア所長は「以前なら700万人、しかもその大半が若者たちによるデモ行進など考えられなかった」と、この1年で組織化された抗議活動「世界の気候ストライキ」に言及した。その多くは、ソーシャルメディアにより実現したものだ。

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 グレタさんは昨年、スウェーデン国会の前でただ一人抗議活動を開始してから、実に300万を超えるツイッターのフォロワーを獲得した。

 ステア所長によると、現状は散発的に実施されているこうした動きが今後も拡大するかはまだわからないという。だがおそらく、少なくとも来年のアメリカ大統領選挙では、気候変動が重要なテーマとなるだろう。「アメリカだけでなく、世界でもこの問題は議題に上がるようになっている」と所長は言う。

 単純な話、候補者は現状の動きを無視することはできない。

 ルイジアナ州では海面上昇によって、改善する見込みのない大規模な土地の損失に見舞われている。気候変動に向き合う取り組みは、もはや学生の気まぐれなどではない。

 昨年アメリカでは、生徒が海岸の保護と修復の仕事に就く準備を支援する学校としてニューハーモニー高校が開校した。

「力を貸してあげたい。そうすればここに50年以上住むことができる。私はこの地で子育てをしたいから」と2年生のマイケル・ベイリーさんは話す。彼は最近、ショベルを使って原生林からつる草を切り取る作業をしている。「少しの変化で、新しい動きを目にすることができるかもしれない」と話す。

 今年初め、政治の世界では「グリーン旋風」の兆しが欧州議会選で現れ、環境政党が有権者の間で多くの票を得た。

 オーストリアの緑の党が初めて政権入りする動きがあるほか、隣国ドイツではその姉妹政党がここ数ヶ月、有権者の高い支持を集めている。

 20歳の学生で、ドイツ南部の都市ハイデルベルクの環境活動家でもあるフランシスカ・ハイニッシュさんは、誰かが名づけた「グレタ世代」という言葉が政権を担う人々の話題になることを願っている。

「圧力は高まる一方」だとフランシスカさんは話す。グレタさんがニューヨークの国連会合で「よくもそんなことを」と呼びかけ、世界のリーダーたちと向き合ったのは有名な話だ。彼女の毅然とした発言は、年長者たちに対して怒りを感じている、一部の若者たちの気持ちを代弁しているという。

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 ドイツにあるポツダム気候影響研究所で共同ディレクターを務めるヨハン・ロックストローム氏は、「若者たちの行動によって気候変動の議論に倫理観の要素が加わった。社会のあらゆる世代を超え、『健康でクリーン、かつ持続可能で安全な未来こそ私たちが望むものだ』という新たな思想を、若者たちの行動が生み出した」と語る。

 後の世代がいつか昔を振り返るとき、地球温暖化の潮向きが変わり始めた一つの節目として、大規模な抗議活動の高まりを意識するようになるかもしれない。

「本当にそうなるかはまだわからないが、これが転換点になるだろう」とロックストローム氏は言う。

By FRANK JORDANS Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP