ファストファッションの「闇」暴く本が話題に 労働搾取、環境破壊の問題

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◆コスト削減で利益追求 しわ寄せは途上国へ
 価格を抑えるため、ファストファッションは製造コストを切り詰める。工場は途上国に作られ、現地の安い労働力を使って大量に生産されるようになった。移転先となった途上国の経済は、雇用が創出されGDPも増加するという大きな恩恵を受けたが、労働者は低賃金に甘んじている。世界では6人に1人が工場や小売りなどのファッション産業で働いており、最も労働集約性の高い産業の一つとなっているが、人権団体の調べでは、衣食住といった必要不可欠なニーズを満たせる縫製に携わる労働者は2%に満たないということだ(WSJ)。

 コスモポリタン誌のスタイル・ディレクター、チャールズ・マニング氏は、ファストファッションの代表格であるフォーエバー21のようなブランドは、犯罪レベルの安い労働力を使って製品を作り、とんでもなく安い価格で販売していると批判する。企業が唯一気にかける収益に影響を与えず、18ドル(約2000円)のドレスを倫理的に作ることは不可能だと主張している。

 工場の劣悪な労働環境も問題視されている。トマス氏の著書のレビューを書いたライターのリリー・メイヤー氏は、2010年にバングラデシュで起こった工場火災に関する章は、最も胸が痛むものだったと述べている。この工場の出口には鍵がかけられており、逃げようとした労働者は窓から飛び降りるしかなかった。トマス氏のインタビューに答えた労働者管理に従事する女性は、皆ひどい環境だと知っているが、だれも気にかけないと述べている。メイヤー氏はファストファッションの明らかな犠牲者は労働者だと指摘している(米公共ラジオNPR)。

◆衣類のポイ捨て? 環境破壊深刻
 ファストファッションのもう一つの問題は、大量購入大量廃棄だ。アメリカではいま、1980年の5倍の衣類が消費されているという。年に68枚の衣類を購入している計算だ。世界では年間800億枚の衣類が購入され、着用回数は1着あたり平均でわずか7回という調査結果もある。このまま世界の人口が増え豊かになる国が増えれば、人々がその消費行動を変えない限り、2030年までには消費される衣類はいまより63%も増加するという(WSJ)。

 消費者に飽きられた衣類は捨てられる運命にある。2015年には1050万トンの繊維品がアメリカで埋め立て処分されており、そのほとんどは衣類だった。ほとんどが化学繊維を含んでおり生分解されない。また、製造過程で工場から出る二酸化炭素、汚水なども、環境破壊を起こすとトマス氏は指摘している。

◆消費者も行動を 小さな一歩を踏み出すとき
 結論として、今後はファストファッションから伝統的スローファッションへ回帰すべきだとトマス氏は述べる。もっとも、価格の高いスローファッションを選ぶだけの余裕がない消費者がいるという点で、Fashionopolisの主張には弱点があるとメイヤー氏は指摘する。レンタルや中古購入という選択肢も示されているが、それでもハードルは高いとしている。

 この点はトマス氏も理解しており、衣料品の素材をリサイクルする技術が生まれるまでは、消費者が責任を持った行動を取るべきだと述べる。具体的には、必要以上に衣類を持たない、搾取工場で作られたものを買わない、修繕しながら着る、捨てる前に別の活用法を見つける、などが提案されている。そしてこれらのちょっとしたことを積み重ねれば、大きな貢献になるだろうとしている。

Text by 山川 真智子