ジョギングしながらごみ拾い、北欧発「プロギング」のすすめ 深刻なたばこの吸い殻の害

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◆たばこの吸い殻公害は深刻
 たばこの吸い殻は、スモーカーが思っている以上に環境に悪影響を及ぼす。英アングリア・ラスキン大学のダニエル・グリーン博士が率いるチームは、ポイ捨てされたたばこの吸い殻がどのように土壌や植物に悪影響を与えるかを調査し、7月に学術誌「Ecotoxicology and Environmental Safety」(環境毒性および環境の安全性)に結果を発表した。

 グリーン博士の研究により、たばこの吸い殻は土壌を汚し、木々の成長を阻害していることが明らかになった。土壌にたばこの吸い殻がある場合、クローバーが発芽する確率が27%減少し、発芽した場合でも、芽の長さは28%減少した。芝生の場合は、発芽の確率は10%減、芽の長さは13%減となった。
 
 この研究結果を報じた英BBCによると、たばこの吸い殻は世界中で年間4.5兆個、ポイ捨てされている。たとえば英国のケンブリッジ周辺でグリーン博士のチームが調べたところ、1平方メートルあたり多いところで128個の吸い殻が捨てられていたという。

◆たばこのフィルターは自然分解されない
 たばこの葉が「自然なもの」であるためか、吸い殻も簡単に自然分解されそうな気がしてしまうが、吸い殻は自然界では分解されない。米CNNが1月に報じた記事によると、たばこのフィルターはアセチルセルロースからできている。これはプラスチックの一種で、自然界で分解されるのには数十年かかってしまう。分解されて細かくなったフィルターは、マイクロプラスチックとなって土壌に入りこんだり、水に流されて水を汚染することになる。

 本来はポイ捨てせずにきちんと吸い殻を捨てるのが、環境保護の観点から一番適した吸い殻の処理方法のはずだ。とはいえ、残念ながら街には吸い殻があふれている。ランニングしているときにあまりごみを気にする人はいないかもしれないが、環境保護の意識が高いランナーはぜひ一度、プロギングを試してみて欲しい。いつもの淡々としたランニングに「イベント性」をもたらすことができるうえに、地球や街にいいことをして少しだけ気分がよくなるはずだ。

Text by 松丸 さとみ