エコな「量り売り」がIT化で手軽に 商品触れずにスマホ操作、チェコ発の「MIWA」

Arancia Europa

◆バルク・ビンを洗うという新発想
 MIWAにはもう一つ、エコロジカルでかつ面白いポイントが隠されている。商品製造者が通常の包装で量り売りの店に商品を卸すのではなく、バルク・ビン自体を包装と見なしてバルク・ビンに商品を入れて届けるのだ。店では、バルク・ビンを専用の棚にセットするだけ。バルク・ビンは1個15リットルで統一してある。量り売りの店に卸す15リットル分の包装を省くことができれば、ごみはこの流通経路でも確実に減る。

 商品がなくなったら、店はバルク・ビンを棚から外して洗浄所へ送る。洗ってきれいにしたバルク・ビンは商品製造者へ届けられ、店への卸しが繰り返される。

◆開発費1億2千万円以上
 MIWAはチェコ・プラハのArancia Europaが開発した。起業したのは同社CEO のPetr Báčaさんで、2014年に雑誌でプレサイクルという言葉を初めて見てアイデアがわいたのだという。長年、パッケージデザインの仕事をしてきたため、パッケージの長所や短所についてはとても詳しかった。試行錯誤は数年続き、開発には1億2千万円以上費やした。2017年春にサイトを公開してMIWAを紹介したのを皮切りに、たくさんの人たちにコンセプトに共感してもらえるよう働きかけ実用化を目指してきた。

Petr Báča氏 / Arancia Europa

 初めのうちは、無理ではないか? 複雑すぎるのでは? といった意見ばかりが聞かれたが、17年秋に国際的な環境系の賞「The Circular Design Challenge」で、60ヶ国以上600以上の応募のなかから優勝(優勝は全部で6者)して、実用化に現実味が帯びた。2018年11月、ようやく導入の準備が整い、プラハ内にある数店に設置しはじめた。システムの調整が完了するには数ヶ月かかるそうだ。MIWAは独立した店舗にすることも、こうして既存の店に取り入れてもらうことも目指している。

 日本でも量り売りの店はあるが、ここまで進化させたアイデアはまだないのではないだろうか。確かに複雑かもしれないが目からうろこが落ちた。アイデアは絞るといろいろと出てくるものだと感心させられる。

Text by 岩澤 里美