伝統への熱い思いをヒップホップにのせて―カナダのファースト・ネーションの若者たち

「ホーム・トゥー・ミー」のレコーディングセッションーグラッシー・ナロウズ・ファースト・ネーション 写真使用許可 ナウェ・ジナン

著:Eduardo Avila カナダ全土のファースト・ネーションの若者たちが、ヒップホップを通じて、自分たちにとって重要な問題に考えを深めている。一連の出前型ワークショップがコミュニティーの活動に一役買っている。

 2014年以降「ナウェ・ジナン」のツアー活動の一環として、ワークショップのリーダーたちは直接、学校やユースセンターに簡易スタジオを設置して、曲作り、録音、音楽・映像作品制作、そしてライブパフォーマンスなどを若者たちに教えている。

 このようなワークショップは当初、モントリオールを拠点に教育活動を行っているデビッド・ホッジスが音頭をとっていた。ホッジスは北ケベックの10のクリー族コミュニティーと共に活動し、その後クリー族のヒップホップグループ、「ノーススターズ(The NorthStars)」とコラボレーションを始めた。ワークショップの進め方はこうだ。まず、参加者の若者たちと話し合い、「文化的アイデンティティ、言語、苦闘、愛、自己受容」など、若者たちが心に抱いていること全てを題材として探り出す。次にここから得たインスピレーションをもとにして、若者たちを主役にした歌やビデオを制作するのだ。ワークショップは引く手あまたで、このチームは他にもブリティッシュ・コロンビア州内のファースト・ネーションのコミュニティーとも活動を続けている。また、合衆国ネブラスカ州のウィネベーゴ族と同様のワークショップを開催するために招かれた。

 一例として、ブリティシュ・コロンビア州キッツムケイラム・ファースト・ネーションのナ・アクサ・ゲラキョー校制作によるビデオを見てみよう。これはハイウェイ16、つまり「涙のハイウェイ」の物語だ。カナダ西部に広がるこの幹線道路沿いで、若い女性20人以上(そのほとんどがファースト・ネーション)が行方不明になったり、殺害されている。この事件はほとんど未解決のままだ。

 次のビデオはネマスカ・クリー・ファースト・ネーション制作のものだ。これはビデオゲームをテーマにして、グローバル化の影響を受けながらも、古くから伝わる慣習や慣例を守ることがいかに大切かを伝えている。

 出演する若者たちは、ファースト・ネーションの言葉をうまく話せるものもいればそうでないものもいる。しかし曲名の多くはクリー語でつけられている。ヴァマゴオステュイ・クリー・ファースト・ネーションで録音されたこの歌は、フック(サビ)の部分はクリー語で歌われる。出演者の若者たちは、あの「ノーススターズ」のゲイリー・ジョリーの手助けを少し受けた。ジョリーはイースタン・ジェームス・ベイ・クリーでのリリック(メロ)をここでも使わせた。

 「ナウェ・ジナン」はフェイスブックのページに、この歌詞の聞き取りを英訳とともに掲載した。

一人ぼっちという気がする時もある

でも俺はがんばって生き続ける

今日あんたにも俺たちの叫びが聞こえる

若いとき俺たち道に迷ったが

でもいつか立ち上がってみせる

みんな、道を踏み外さないでくれ

みんな、大人になって若い奴らの先頭に立つんだ

みんな、神の定め通りに若い奴らを導くんだ

 読者でありクリー語保存活動家であるケビン・ブルッソーもまた、音節主音を使って歌詞を文字起こしし、同じコメント欄に掲載した。(自身のブログにも掲載、許可をえてここに再掲載)

ᒬᐦᒡ ᐁᑳ ᒥᑐᓐ ᐁ ᐱᓯᔅᑳᑎᑲᐎᔮᓐ ᐁ ᐃᑌᔨᐦᑕᒫᓐ
ᓲᐦᒃ ᒫᒃ ᓂᑲ ᑯᒋᐦᑖᓐ ᐆᑕᐦ ᐊᔅᒌᐦᒡ ᒉ ᐱᒧᐦᑌᔮᓐ
ᐊᓄᐦᒌᔥ ᒋᑲ ᐯᐦᑕᐎᓈᐙᐤ ᐁ ᐊᔮᔑᐦᑴᔮᐦᒡ
ᒬᐦᒡ ᐊᓐᑌ ᐁ ᐗᓂᔑᓂᔮᐦᒡ ᑖᓐ ᐁᔑᓈᑯᓯᔮᐦᒡ ᐁ ᐅᔥᒋᓃᒌᐎᔮᐦᒡ
ᒥᒄ ᓂᑖᐺᐦᑌᓐ ᐯᔭᑯ ᒌᔑᑳᐤ ᒉ ᐸᓯᑰᑣᐤ
ᒨᔾ ᓂᐐ ᐙᐸᐦᑌᓐ ᓇᑕᐐᔾ ᐁ ᐃᔑ ᐱᒫᑎᓰᑣᐤ
ᒉ ᓂᐦᑖᐎᒋᑣᐤ ᐁ ᓃᑳᓂᔥᑲᐙᑣᐤ ᐅᔥᒋᓃᒋᐤᐦ ᑲᔦ ᐐᔭᐙᐤ
ᒉ ᑑᑕᐦᒀᐤ ᑖᓐ ᑳ ᐃᑕᔓᒥᑯᑣ ᒋᔐᒪᓂᑑᐦ

 たった3本のビデオでファースト・ネーション・コミュニティーの創造性を語りつくすのは至難の業だった。このプロジェクトで制作された歌はすべて、「ナウェ・ジナン」のユーチューブ・チャンネルで見ることができる。また、さまざまなワークショップをまとめたCDも5枚、リリースされている。

This article was originally published on Global Voices(日本語). Read the original article.
Translated by Yasuhisa Miyata.
Proofreading:Moe Aritsugi

Text by Global Voices