自分はどんな消費者になりたいか

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 『ヒップな生活革命』という本を上梓して、5年が経った。未曾有の金融危機を経て、自分が暮らすブルックリンという土地を中心に、インディペンデントな小さな作り手や、彼らが作る商品が登場した。そのことをきっかけに、アメリカという国で、なぜ食事がおいしくなったのか、なぜ地産地消が注目されるようになったのか、どうして消費者たちがそれに呼応するようになったのか……拝金主義で大企業が圧倒的に強いアメリカで、大きな波に流されずにどうやって生きていくのかを考える人たちの声を紹介する――そんなつもりで書いた本は、私のもとを離れ、たくさんの場所に旅をし、無数の新しい出会いをもたらしてくれた。そしてそれは、私自身の生き方を振り返り、少しずつではあるけれど、変えるきっかけにもなった。

 あるとき、イベントでの質疑応答で、来てくれた人からこんな質問を投げかけられた。

「あなたの革命は、どれだけ本気なんですか?」

 その瞬間、ハッとなった。

「こんな小さなムーブメントを作っても、大きな流れの中では無意味なのではないでしょうか?」

 そう言われたこともある。

 彼らが私に伝えたかったことは、それなりに正当性がある。

 私は、ニューヨークという大都会を拠点に暮らし、ニューヨーク州北部に家を借りている。東京とのあいだを年に何度も行き来し、車、飛行機、電車を多用して生きている。ファッションの世界に身の一部を置き、立派な物欲もあれば、食欲もある。だから、すでにその時点で環境破壊に加担し、消費文化の一部になっていることは間違いのない事実である。

 そんな状況の中で、自分に何ができるだろうかということを、上の質問を聞いて以来、ずっと考えてきた。都会での生活を捨て、スマホやコンピュータと決別し、山に引っ込めばいい、ということではないだろう。

 本を出してからの5年間で、世の中は大きく変わった。

 まずひとつには、環境破壊がこれまで以上のスピードで進行していることだ。台風、豪雨、地震、津波、山火事といった自然が猛威を奮って災害が拡大し、たくさんの人間が命を落としたり、コミュニティが破壊されたりする。そんな話が日々、ニュースを賑わせている。もうずいぶん前から科学者たちが、「このまま行くと地球はヤバい」と警鐘を鳴らし続けているにもかかわらず、人間たちは「これまでのやり方」を変えることができない。

 アメリカ政府は、「global warming(地球温暖化)」への対処を訴えて大統領選挙に出たアル・ゴア元副大統領が選挙に負けたとき(2000年)に、「温暖化」という言葉を「climate change(気候変動)」という表現にすり替えた。われわれ人間の暮らし方のせいで地球の温度が上がっているわけではない、それは何百年ごとに起きる「気候変動」の一部である。そういう考え方である。

 ヨーロッパ諸国は、温暖化が起きているという前提のもとに、水路をつまらせ、海洋動物を苦しめ、生産から廃棄されるまでの過程で温室ガス排出の原因となっているプラスチックを禁止するなど、すでに環境政策に乗り出している。

Text by 佐久間 裕美子

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