「日本がリーダーになれると示した」安倍首相の海外メディア評価

Ahn Young-joon / AP Photo

 安倍首相が8月28日、辞意を表明した。2006年発足の第1次安倍内閣はわずか1年と短命だったが、2012年の再登板後は、アベノミクス、地球儀を俯瞰する外交、積極的平和主義など独自のカラーを打ち出し、国際的にも存在感を示してきた。「回転ドア」と呼ばれた日本の首相交代のイメージを消し去る安倍首相の8年間を、海外メディアはどう見たのだろう。

◆別れを惜しむ? 海外では安倍首相を高評価
 安倍首相の辞任表明は海外でも大きく報じられており、多くが肯定的な内容となっている。国際NPOプロジェクト・シンジケートのサイトに寄稿した元エコノミスト誌の編集長ビル・エモット氏は、安倍首相は1945年以来、最も国際的に知られた日本の政治家だと述べている。在職期間最長の日本の総理大臣であることから、世界の首脳たちの中でもすっかり古株となり、日本の顔となっていたことがよくわかる。

 エモット氏は、退任は病気のせいとは言え最近の支持率が低いこともあり、安倍首相の引き際はまさに政治家の古い原則を反映したものだったとする。自分の政治生命の終わりが近づけば、ライバルに押し出される前に自ら去るべきことを知っていたとしている。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の社説は、本来なら東京五輪の成功と経済回復の余韻に浸りつつ去っていくはずだった安倍首相が、持病の悪化で辞任することに同情的だ。新型コロナの影響で安倍時代の経済的利益も吹き飛ぶ状況だが、それでも安倍首相は自身のレガシーを誇るべき理由があるとする。官僚から官邸主導の政治に変え、失われた数十年から脱却するために必要な試みができたことを評価し、安倍首相が新しいアイデアやエネルギーをもたらしたとしている。

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Text by 山川 真智子