トランプ派のヤジに応酬も バイデン氏の一般教書演説パフォーマンスは国民に伝わったか

Shawn Thew / Pool via AP

 3月7日、バイデン大統領任期1期目における最後の一般教書演説(State of the Union:SOTU)が行われた。11月のアメリカ大統領選挙を控え、共和党候補がほぼ確定したタイミングにおける演説に注目が集まった。

◆大統領としての手腕を強調
 通常は年初の1月もしくは2月に行われることが多い一般教書演説だが、今年は大統領選挙の予備選挙や党員集会が集中する「スーパーチューズデー」の直後に行われた。SOTUは、スーパーチューズデーにおいて共和党候補のトランプ前大統領が圧勝し、2位につけていた対抗馬のニッキー・ヘイリーが候補者指名争いから撤退した翌日。こうしたタイミングもあってか、バイデン大統領は演説の中で、実名を呼ぶことはなしに「前任者」をたびたび引き合いに出し、彼を批判するとともに、自分の政治家および大統領としての実績や手腕に関する主張を繰り返した。

 バイデン大統領は、ヒトラーが欧州で台頭し始めた1941年における当時のルーズベルト大統領の言葉を紹介するとともに、現在のアメリカも歴史上、前例のない状況に置かれているというメッセージから演説をスタート。自由と民主主義が危機的な状況にあり、演説を通じて議会とアメリカ国民に警告を発するのが演説の目的であると述べた。具体的な内容は、ロシア・ウクライナ戦争に関してプーチン大統領を名指しで批判。アメリカの兵士は送らないが、ウクライナの防衛のために兵器を提供する意思を示した。その後に連邦議会議事堂襲撃事件について触れ、前任者は事実を隠蔽しようとしていると批判。こうした事例は国内外における民主主義の危機であると訴えた。

 一方、経済政策に関しては自身の実績を強調。就任時、経済が危機的状況にあったが、3年で失業率を過去50年で最も低いレベルに引き下げたこと、インフレ率を9%から3%にまで抑えたこと、国内の製造業に投資し、新たな半導体工場では大学卒業資格がなくても年収10万ドルを稼ぐことができるといった雇用を生み出したこと、クリーンエネルギーに関する6500億ドルの民間投資をもたらしたことなどを主張した。

 またイスラエル・ガザ戦争については、自分はすべてのキャリアを通じてイスラエルを支持してきたが、人道支援については交渉の余地はなく、罪のない一般人を守ることは最も優先順位が高いと語った。またアメリカ軍はガザの横に一時的な埠頭(ふとう)を建設し、そこから食料、水、医薬品、一時シェルターなどの物資を輸送した船舶が乗り付けられるようにするとの施策を示した。

Text by MAKI NAKATA