「政敵の暗殺も可」のトランプ氏免責主張、米控訴裁認めず

Reba Saldanha / AP Photo

 2024年のアメリカ大統領選で共和党候補指名を目指すトランプ前大統領は、今のところ選挙キャンペーンよりもニューヨーク州、ジョージア州、首都ワシントン、フロリダ州で行われている4件の刑事裁判の対応に忙しいようだ。トランプ氏は2023年の1年間に、自身の政治資金管理団体(政治活動委員会=PAC)に寄せられた寄付金から5000万ドル(約75億円)以上を弁護士費用に充てた。各裁判は今年本格的に始動していくため、この額は今後さらに大きくなるものと思われる。

◆トランプ弁護士「大統領は政敵の殺人も可」
 トランプ裁判のなかでも、現在最も注目を集めているのはワシントンで行われている2021年1月6日の議会襲撃事件に関するケースだ。当初、この裁判の初公判は3月4日に予定されていたが、トランプ陣営の「大統領には在任中に免責特権があり罪に問われない」という主張をワシントンの連邦地方裁判所が退けたことから、同氏が連邦控訴裁判所に上訴。連邦控訴裁の判断を待つため、連邦地裁が初公判の日程をいったん取り消した経緯がある。

 トランプ氏の免責特権についての口頭弁論は、1月にワシントンの連邦控訴裁で行われた。CNNによると、トランプ氏の弁護士はその際、判事の1人に「大統領は政敵の暗殺をネイビーシールズチーム6に命令した場合、弾劾されなかったら有罪にならないのか」と尋ねられ、「連邦議会で弾劾(だんがい)裁判にかけられ有罪評決が下された場合のみ刑事訴追される」と答え、大統領は殺人をしても一般市民のように罪に問われるべきではないことを示唆し、注目を浴びた。

Text by 川島 実佳