トランプ氏が7月に大統領選出馬表明か 1月6日事件捜査で焦り

米アラスカ州での集会で演説するトランプ前大統領(7月9日)|Bill Roth / Anchorage Daily News via AP

 2021年1月6日に首都ワシントンDCで起こったアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件から早くも1年半が経とうとしているなか、下院議会の議員で構成される1月6日調査委員会の動きが活発化している。6月からは全米で放映され、事件の証人が宣誓証言を行う公聴会も定期的に開催されており、いままで明確ではなかった事実が次々と明るみに出てきている。その公聴会での証言で、これまで知られていなかった襲撃事件当日のトランプ氏の言動が次々と露呈した。

◆ホワイトハウス元職員が公聴会で爆弾証言
 公聴会は当初6回開催される予定で、6月中に4回が終了し、その後2回は7月開催予定だった。しかし6月28日に事前に予定されていなかった特別公聴会が緊急開催されることになった。誰が証言するかは当日まで告知されていなかったが、その公聴会で証言を行ったのは、事件発生時にマーク・メドウズ大統領首席補佐官のアシスタントを務めていた26歳のキャシディ・ハッチンソン氏だった。

 ハッチンソン氏はトランプ氏が事件当日、武装した支持者や民兵組織を議会に乱入させることを希望して金属探知機を撤去するように要請し、「彼らは私を傷つけに来たわけではないから」などと発言したことや、トランプ氏本人が議会襲撃の場に無理矢理行こうとしていたこと、事件前や当日のメドウズ氏やジュリアーニ氏の言動、そして事件後にトランプ氏に恩赦を依頼したことなど、数々の証言を行った。

 ハッチンソン氏の発言で注目が集まったのが、当日事件に介入して火消しに奔走し、トランプ氏の言動や事件の鍵を握るといわれるパット・シポローニ大統領顧問の存在である。そのシポローニ氏は公聴会自体には出席しないものの、7月8日に1月6日委員会に証言することを承諾した。ハッチンソン氏の証言について右派が同氏の主張の信頼性を攻撃材料にしたこともあり、シポローニ氏がハッチンソン氏の証言を裏付ける必要もあったのである。

 シポローニ氏の証言内容は7月10日現在まだ明らかになっていないものの、CNNによると、1月6日調査委員会メンバーのゾーイ・ロフグレン下院議員(民主)は、シポローニ氏の証言が「ほかの証人の証言と矛盾していなかった。私たちはいくつかのことを学んだので、今後の公聴会で公表していく」と話し、シポローニ氏がハッチンソン氏の証言を裏付けたことを暗に示唆した。ハッチンソン氏の証言によりトランプ氏が議会襲撃計画を事前に知っていたことが暴露されたが、シポローニ氏の証言内容次第でこれが裏付けされれば、トランプ氏が1月6日事件で訴追されることに一歩近づくだろう。

Text by 川島 実佳