トランプ氏に迫る議会襲撃捜査 司法長官「どのレベルでも責任追求する」

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 2020年のアメリカ大統領選で敗北し、2021年1月にホワイトハウスを去ったトランプ前大統領。しかしすぐには負けを認めず、選挙直後から不正選挙を声高に叫び、僅差で敗北した州で次から次へと裁判を起こしたもののことごとく敗北。追い詰められ、挙句の果てには1月6日に支持者をけしかけ、大統領選結果を承認中だった連邦議会議事堂襲撃を扇動した疑いが持たれている。

 アメリカではこの事件がただの暴動ではなく、連邦政府に対する「反乱」、または正当な選挙結果を覆そうとする「クーデター」未遂として位置づけられているが、その後1月20日にジョー・バイデン氏が大統領に就任。民主党が過半数を占める下院議会では1月6日調査委員会が結成され、捜査が進んでいる。しかし、メリック・ガーランド司法長官が率いる司法省からは2021年中に、トランプ氏やその側近の捜査に関する情報の開示はなく、直接襲撃に加担した人々以外の逮捕者も出ていなかったため、民主党支持者や法律関係者などからは不満や苛立ちの声が続出していた。

◆司法省「どのレベルでも1月6日の刑事責任追及」
 そのようななか、アメリカは連邦議会襲撃事件1周年を迎えたが、その当日に捜査の流れが変わるシグナルが発された。CNNによると、バイデン大統領は同日連邦議会議事堂で演説を行い、襲撃事件がトランプ前大統領による「クーデター未遂」だと明言したのである。バイデン大統領は、これまで1月6日調査委員会や司法省に遠慮してか、同事件について名指しの非難を避けてきたが、この日の演説では「歴史上初めて、大統領が選挙で敗北しただけではなく、平和的な政権の移行を阻止しようと試みた。しかしそれに失敗した」と初めてトランプ氏を公的に非難した。

 また同日にはガーランド司法長官も記者会見を行い、襲撃事件に関する司法省の捜査について言及した。CBSニュースによると、同長官は「司法省は1月6日の加害者を、どのレベルであっても法律の下で責任を負わせる。当日その現場にいても、あるいは民主主義への攻撃に対し刑事責任がある場合でも」と述べ、また捜査のスピードについては、「1月6日の(襲撃事件の)ような状況については、完全な責任の追及はすぐに実現するものではない」と述べ、時間をかけて捜査を進めていくことを示唆した。

Text by 川島 実佳