第3波のピーク超えた? 制限緩和に向かう欧州
◆再生産数が1を切っていないスイス
制限緩和に向けて動き出したものの、いまだリスクが高いという反対の声が聞かれる国も少なくない。たとえばスイスは、4月19日から、感染予防対策という条件つきで、レストランのテラス席や映画館、スポーツ施設、劇場などの営業再開を認めた。しかし、実効再生産数は4月16日時点で1.04と、1を切っていない。そのため、ジュネーブ大学のグローバル・ヘルス研究所フラオー所長をはじめ科学者らはスイスの制限緩和策に懸念を表明している(ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ、4/19)。
◆病院の逼迫が続くベルギー
またベルギーも、4月19日から学校を再開。26日からは、予約なしで買い物ができるようになり、美容院やエステサロンなども営業を再開した。続く5月も段階的に制限が解除され、6月には「普通の生活」に戻ることを目指す。しかし、専門家らは、感染状況の「高止まり」を指摘。ドゥ・クロー首相自身、医療逼迫を憂えている。4月22日の段階でベルギー全国の集中治療室に、合計82床しか空きがなく、隣国のドイツに患者が搬送されたほどだ。(ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ、4/26)
◆イタリアではいまだ一日300人を超える死者
イタリアでは、全国の15の地域で、4月26日からレストランのテラス席営業が6ヶ月ぶりに可能となった。22時からの夜間外出禁止令はまだ続いているが、5月3日からは人数を制限して、映画館や劇場の営業も再開される見込みだ。だが、減少傾向にあるとはいえ、4月28日の新規感染者数は1万3000人強と、2021年2月ごろの水準だ。ドラギ首相はリスクは計算済みだとするが、パドヴァの微生物学を専門とするクリザンティ教授などは、制限解除は「歴史的に愚かな決定」だと非難の声を上げている(ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ、4/19)。
◆感染拡大傾向も緩和を決めたオランダ
オランダの夜間外出禁止令は、一部の国民から激しい反発を受けたものの3ヶ月施行され、4月28日に終わりを迎えた。同時に、バーやレストランは屋外であれば、人数制限はあるものの、正午から18時の営業を再開できるようになった。大学や高校も徐々に通常授業に向けて動き出している。だが、4月23日の実効生産数は1.08と、感染はまだ拡大傾向のままだ。実はルッテ首相は、感染状況を鑑み、むしろ制限策の延長を考えていたが、政界、経済界、また国民の圧力を受け、緩和を決めたのだ。オランダ労働党リーダーのリリアンヌ・プルメンは、これを「完全に無責任な決定だ」と批判している(ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ、4/26)。
ヨーロッパでは、2020年の夏、第1波後の制限を解除し、バカンスの人の移動が結果として第2波を呼ぶ一因になったと見られていた。バカンスシーズンの経済効果を無にするわけにはいかないということなのだろうが、できるなら、2年続けて同じ轍は踏んでほしくないものだ。
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