トランプ氏も困惑? カニエ・ウェスト氏、大統領執務室で仰天パフォーマンス

AP Photo / Evan Vucci

 ライブ・フロム・オーバルオフィス! イッツ・カニエ・ウェスト!

 10月11日、ラッパーのカニエ・ウェスト氏はラップを披露しなかった。しかし、執務机を挟んでドナルド・トランプ大統領の向かいに座った彼は、社会問題、水素燃料航空機、メンタルヘルス、スポンサー契約、政治など諸々の話題に及ぶとりとめのない一人芝居を何幕も披露した。

 いつものように表舞台に立つトランプ大統領に当てられたスポットライトを浴びて、ウェスト氏は放送禁止用語を連発し、政策を提案し、挙句にはハグを求めた。

                                                                                                                 

「こいつを被るなって脅されたよ。だけど、この帽子は俺にパワーをくれるんだ」と、赤い“Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)”キャップについて言及したウェスト氏は、「あなたのおかげで俺はスーパーマンのマントに代わるものを手に入れた」とトランプ大統領に言った。

 非伝統的な今のホワイトハウスの基準からしても、それはシュールな場面だった。この意外な組み合わせの2人は、非公開の昼食会を前に、製造業、ギャング、刑務所改革、ウェスト氏の出身地シカゴの暴力犯罪などの政策問題を話し合う懇話会という名目で報道陣の問いに答えた。トランプ大統領の義理の息子で上級顧問のジャレッド・クシュナー氏、元NFL選手のジム・ブラウン氏、連邦刑務所に服役中のギャングのリーダーの代理人弁護士、報道陣がこのショーを見守った。

 休憩中に「たまげたね」と漏らしたトランプ大統領は、この状況の奇妙さを理解しているようだった。

 2016年の入院以来、ウェスト氏の精神状態は憂慮すべき問題だった。9月29日に放送された『サタデー・ナイト・ライブ』で奇怪なパフォーマンスを披露したウェスト氏は、エンドクレジットの後に台本にはないトランプ大統領支持のメッセージを発した。

 ウェスト氏はこの話題に言及し、一時は双極性障害と診断されたが、誤診であったと後に神経心理学者から聞かされたという。

「その先生によると、俺は双極性障害じゃなくて、睡眠不足だったんだ。このままじゃ10年か20年したら痴呆症になるかもしれない、そうなれば息子の名前さえ思い出せなくなるってさ」

 トランプ大統領、ブラウン氏、ウェスト氏の間で交わされた北朝鮮に関するやりとりで会話は始まった。自分が就任する前の北朝鮮は戦争に向けて進んでいたとトランプ大統領が語ると、戦争を回避したとしてウェスト氏がトランプ大統領を称賛した。北朝鮮が好きだとブラウン氏が言うと、トランプ大統領は同意した。

 そこから、ウェスト氏は刑務所改革とシカゴのスラム街で起こる暴力犯罪について論じた。ギャングスター・ディサイプルズの設立者にしてリーダーのラリー・フーバー受刑者(殺人による終身刑で服役中)を取り上げ、「彼がムショに入れられたのは、コミュニティーのためにプラスになることを始めたからだ。彼には権力があるし、お偉いさんみたいなことは言わないし、住民を取り込めるってわかり始めたからだ」と主張した。

 博愛主義を自称するウェスト氏は、2016年の大統領選で民主党対立候補だった「ヒラリー・クリントン氏が好きだった」が、トランプ大統領の「男性的なパワー」に惹かれたのだそうだ。また、奴隷制を廃止した合衆国憲法修正第13条を「落とし穴」だと批判した。

 ウェスト氏は自分の携帯電話をトランプ大統領に差し出し、エアフォースワン(大統領専用機)に取って代わる飛行機として水素燃料航空機の画像を見せた。

「これがiPlane 1だ。これこそ合衆国大統領専用機にふさわしい」

 そして、「彼が立派に見えないと、国民も立派じゃないと思われる。この人は俺たちの大統領だ。誰よりもいかしてなきゃならないし、どこよりもいかした飛行機を持たなきゃ」と付け加えた。

 また、ファッションに関するアドバイスとして、赤いキャップの文言から「Again(再び)」を取って「Make America Great(アメリカを偉大に)」にしてはどうかと提案した。

 ウェスト氏との長く、しばしば理解に苦しむ会話が終わり、さすがのトランプ大統領も困惑した様子を見せた。 

「何ていうか、感動的だったよ」と大統領が言うと、「魂の声を口にしただけなんだ」とウェスト氏は答えた。

 ウェスト氏は自分の言葉のスタイルについて、「いろんなノート(香り)が楽しめる上等なワインさ。俺と4Dチェスをやってみるか…… すげえ複雑だぜ」と後に報道陣に語った。

 報道陣から質問を受けたウェスト氏は、ストップ・アンド・フリスク(相当な理由なしに警察が市民を拘束し、職務質問や所持品検査を行う取り締まりのこと)に懸念を表明した。マイノリティの住民へ甚大な影響を与えるためニューヨーク市では違憲とみなされているにもかかわらず、トランプ大統領は10月8日、この策を導入すべくシカゴを訪れた。

 この件について協議し、柔軟な対応を続ける構えだとトランプ大統領は語った。

 2005年のハリケーン・カトリーナに際し、ジョージ・W・ブッシュ大統領が「黒人のことを気にかけていない」と発言したことについて問われたウェスト氏は、「俺たちはすべての人間を思いやらなきゃならないんだ」と語り、また、「俺は被害妄想的な人間なんだよ」とも語った。

 2016年の大統領選の翌月、トランプ大統領とウェスト氏はニューヨークにあるトランプタワーのロビーで面会している。

 2人でどんな話をしたのか問われたウェスト氏は当時、「人生。人生について話した」と簡潔に答えている。

 西海岸のハリウッドの主流派から敬遠されているトランプ大統領だが、彼にはウェスト氏というファンがいる。今年4月、俺たちは「ドラゴンのパワー」(訳注:ウェスト氏による、「生まれながらに本能的な先見の明を持つ偉大なリーダー」を指す造語) を持っているとウェスト氏はツイートした。 

「トランプに賛同しなくたっていい。でも、よってたかって俺が彼を嫌うように仕向けても無駄だ。俺たちはドラゴンのパワーを持っている。彼は俺のブラザーだ」

 ウェスト氏の妻でリアリティ番組の人気者キム・カーダシアン・ウェスト氏は、今年5月トランプ大統領と面会し、ある麻薬犯罪者に恩赦を与えさせることに成功した。

 ウェスト氏は、2020年の大統領選出馬を含め、政界入りを視野に入れていることをほのめかした。

 ウェスト氏が大統領候補になる可能性について問われ、トランプ大統領が「十分にあり得るだろう」と答えると、ウェスト氏は「2024年以降の話だよ」とすかさず補足した。

 そして、「それでは、昼食にしようか」という大統領の一声でショーは幕を閉じた。

By CATHERINE LUCEY, Associated Press
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP

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