トランプ大統領、「ドリーマー」の将来を壁の人質に 迫るDACA失効

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 移民大国アメリカには毎日さまざまな国から移民を希望する人々が訪れる。もちろん、他国への移住は移民審査を経て合法的にすべき、というのが常識ではあるが、アメリカには不法移民数が圧倒的に多いのが現状だ。米研究機関ピュー・リサーチセンターの調査によると、2015年現在、同国には1,100万人の不法移民が滞在しており、その半数近くがメキシコ人だという。

 その中で特記すべきは、子どもの頃に親とともに不法移民としてアメリカに入国した人々、いわゆる「ドリーマー」である。そんな不法移民の若者たちを本国への強制送還から守るために、バラク・オバマ前大統領が2012年に制定した救済策が「DACA(Differed Action for Childhood Arrivals、ダカ)」だ。しかし今、来年度の暫定予算案討議と来月5日のDACA失効を控え、ドリーマーたちの将来をめぐりトランプ大統領と主に民主党議員たちの間で攻防戦が繰り広げられている。

◆トランプ氏のツイッター発言でDACA再開へ
 現在、アメリカには70万人近くのドリーマーがいるといわれる。トランプ大統領は昨年9月5日、DACAプログラムの終了を発表。同日以降DACAへの新しい申請は受け付けないと述べたものの、18年の3月5日前に滞在許可が切れるDACA登録者には、17年10月5日までに申請すれば2年間の滞在許可延長を与えると述べた(NBCニュース)。

 しかし米紙ニューヨーク・タイムズの1月9日付記事によると、カリフォルニア州の連邦裁判所は同日、トランプ政権に全国規模でDACAプログラムを再開することを命令。判決の理由として判事は、トランプ大統領自身がツイッターに「善良で教育もあり、多くを成し遂げ、仕事もあり、中には軍隊に入隊している人々を、皆本当に(国外に)追放したいだろうか?」と投稿したことから、「DACAを保持することは公益となる」と述べた。つまり、DACAを廃止しようとしたトランプ氏の気まぐれなツイッター投稿を、判事に逆手に取られた形となったのである。

Text by 川島 実佳