「あの河野洋平氏の息子」中国など海外も注目の河野太郎外相 その評価は?

出典:外務省ホームページ

 第3次安倍第3次改造内閣が8月3日午後に発足。今回の改造内閣人事の目玉の一つとなったのは河野太郎氏の外務大臣就任だった。河野外相は「河野談話」で知られる河野洋平氏の息子であるため、中国では期待を持ってこのニュースを受け入れたようだ。そして就任4日目、フィリピンで行われたASEAN(東南アジア諸国連合)関連外相会議に出席して外相デビューした河野外相。海外のメディアはどのように日本の新外相を評価しているのだろうか?

◆中国は期待を裏切られ……
 まずは、これからの対日本政策がスムーズになると大きな期待を寄せていた中国だが蓋を開けてみれば期待外れに終わったようで、7日に行われた日中外相会談で王毅外相が失望感を表したと伝えられている。

 失望感の理由は、河野外相の南シナ海に関しての発言だ。中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」のウェブサイト版では河野外相誕生のニュースを「河野太郎が日本の新外相に就任 父親は親中派の河野洋平」と、河野新外相の父親を前面に出して報道した。しかし会談後はその日本語版ニュースで、「河野外相も王外交部長と会った際、対中重視を強調し(中略)そのために真摯に努力したいとも表明した。表面上の口ぶりは良いが、本心はどうなのか?」として懸念を示している。そして、「河野太郎外相は父の河野洋平氏がかつて中日友好の推進に重要な貢献をしたとはいえ、自民党の影響と拘束から脱するのは恐らく困難だ」と手厳しい。

 他各紙の報道によると、その手厳しさにはそれなりの理由があるようで、王外交部長が河野外相の父親の名前を出して、素晴らしい政治家であった父親の正しい理念を継承するように希望すると述べた際に「中国には大国としての振舞い方を身につけていただく必要がある」と返したという。ニューフェイスであるとことを鑑みると、河野新外相はなかなかの人物だと思える。

◆中国以外からは高評価
 この一連の受け答えについて、香港の英語紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストは「日本の新外相、河野太郎:中国の朋友……それとも敵?」と題した記事を掲載し、海外のメディアを含めてみんなが、河野新外相は父親と同じ姿勢で北京とソウルに対応し、手を組むと思っていたようだがそうではなさそうだ、としている。同紙は「日本の新外相は短い会話の中で中国の言いなりになる気はないという姿勢を見せた」として、評論家たちに評価されていると書く。

 そして、テンプル大学日本キャンパスのアジア研究ディレクター、ジェフ・キングストン氏の見解を紹介。同氏は、「河野外相のデビューは、国際的には高い評価を得ました。(デビューは)就任からほんの数日後でしたが、とても上手くいったと思われます……もちろん、中国以外(の国はそう思っている)」と同紙に語っている。この見解はファム・ビン・ミン・ベトナム副首相兼外相と同じであるという。同副首相兼外相は、中国に対して立ち上がったとして河野外相を称えるコメントをしているようだ。

◆国際派の外相、内閣に新風か?
 スキャンダルが続き、もう失敗できない安倍内閣が持ってきた、異例の人事である河野太郎新外相。AP通信は「日本の新外相はよく知られた反逆分子」という一文で記事を始めているように、これまでの外相とは一味違った政治家であることは諸外国も認識しているようだ。慶応大学で学んだ後、英国ジョージタウン大学へ入学。在学中には、現在共和党の上院議員を務める、当時下院議員であったシェルビー議員会議事務所でインターンの経験がある。ティラーソン米国務長官との会談や日米豪外相会議では通訳を介さす直接英語でやり取りしたそうだ。

 新外相が台風の目となり内閣に新風を吹き込むか、安倍外交の色に染まってしまうか、諸外国はこれからの動向を見守っているといえるだろう。

Text by 西尾裕美