米識者、憲法改正を「世界に良い影響」と評価 中韓やNYTの警戒論と対照的

安倍首相

 岸田文雄外相は17日、中東とアフリカのテロ対策支援のため、新たに1550万ドル(約18.6億円)を拠出することを表明した。また、安倍首相は先週の国会の施政方針演説で、憲法改正という「戦後最大の改革」への支持を強く求めた。

 これらの動きを英BBC、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)などの海外メディアは、安倍政権が目指す「積極的平和主義」が、過激派組織「イスラム国」(ISIL)による日本人人質殺害事件後に加速しているという文脈で報じている。

◆外国人志願兵の流入阻止を狙う
 外務省によれば、1550万ドルは、国際機関を通じて紛争地域での国境警備の強化のために使われる。主な目的は、ISILに参加しようとする外国人志願兵の流入阻止だという(BBC)。

 1月の時点では、岸田外相はこれに750万ドルを拠出するとしていたが、人質事件を受け、2倍に増えた形となった。18日にワシントンで開かれる対テロ国際会議で詳細を明らかにする(AFP)。

 BBCは、人質事件の直前に安倍首相が表明した2億ドルの難民支援の継続も併せて伝え、日本は「テロに屈しない」姿勢を貫いたと報じている。AFPも「日本政府は2人の国民が殺害されたのを受け、(ISILのテロの)解決策を示そうとしている」としている。 アラビア語衛星ニュース局『アル・アラビア』も、AFPの報道を引用して日本の対テロ政策を報じている。

◆米識者は憲法改正を肯定的に評価
 米・戦略国際問題研究所(CSIS)のジョセフ・ボスコ氏は、こうした日本の一連の動きを肯定的に評価しているようだ。同氏は、外交誌『ザ・ディプロマット』に寄せたコラムで、憲法改正問題と絡めて「経済的、軍事的に強い日本は、(アジア太平洋)地域と世界に本質的に良い影響を与える」と記している。

 また、安倍首相が12日の施政方針演説で、「我が国は先の大戦の深い反省と共に、ひたすらに自由で民主的な国を創り上げ、世界の平和と繁栄に貢献してまいりました」と発言した事に注目。同氏は、中国と韓国は首相のこの「深い反省」という言葉を、「無条件に公式な謝罪として受け入れるべきだ」とし、「過去を水に流す良いきっかけになるだろう」と述べている。さらに、安倍政権が掲げている「積極的平和主義」を「軍国主義の復活」などと批判する中国に対し、「大日本帝国を思い出させる攻撃的な姿勢を推し進めているのは中国の方だ」と批判している。

 ボスコ氏は、「積極的平和主義」や「積極的外交」と同義の言葉は中国からも聞こえるが、日本のものは「模範的な民主国家のリーダーから出ている点で明らかに違う」と見る。そのため、アジア太平洋諸国は、憲法改正などの安倍首相の改革を信頼し、支持しなければならないと述べている。また、「(世界は)平和を脅やかす(中国・北朝鮮という)2つの独裁国家に対して警戒心を持ち続け、再び活気づいた日米同盟による抑止力に期待するべきだ」と主張している。

◆安倍首相の「反省」は、「左翼と中韓の批判をかわすため」?
 NYTの論説も安倍首相の施政方針演説を取り上げている。特に注目しているのは、憲法改正を「戦後最大の改革」と表現し、国民の支持を強く求めた点だ。同紙は、熱のこもった演説の様子を伝え、「日本の平和憲法を改正するために行ったこれまでで最も情熱的なアピール」と表現している。

 一方、第二次大戦に対する「深い反省」という発言については、NYTは先のボスコ氏とは異なる捉え方をしているようだ。同紙は、「日本の左翼と中国、韓国」からの「批判をかわすため」の発言だと断定。また、安倍首相らは人質事件を受け、「自国の軍隊を維持することを妨げる」9条改正を急いでいる、と論じる。

 同紙は、憲法改正について、「世論調査で反対が上回って以来、安倍首相は言動に慎重になっていたが、人質事件以降、それが変わった」としている。そして、右派の安倍首相支持者たちが、9条改正に向けて勢いづいていると主張。日本の右派勢力は「中東だけでなく、中国の台頭がパワーバランスを変えている自国に近い地域」でも、軍事力を行使することを狙っている、としている。

Text by NewSphere 編集部