元寇の神風は吹いた? 湖底に眠っていた証拠が示すものは?

『蒙古襲来絵詞』後巻 | Wikimedia Commons

◆湖底に眠っていた証拠
 そんな「神風」だが、近年の科学的調査で、元寇に近いタイミングで台風が接近していたという事実が明らかになっている。調査を行ったのは、マサチューセッツ大学アマースト校で地質学を研究する、ジョン・ウッドラフ准教授だ。

 ナショナル・ジオグラフィック誌(2014年11月5日)によるとウッドラフ氏は、水底に沈む堆積物を分析することで過去の天候を推定できることに着目した。

 チームは熊本県天草市の海岸にほど近い池田池(通称・大蛇池)を訪れ、水底の地層を採取・分析している。結果、いくつかの古い地層において、岩石が砕かれてできた「砕屑物」と呼ばれる破片が通常よりも著しく多く含まれていることがわかった。また、通常量を超えるストロンチウムも観測されている。これらは台風で増水した際、現場近くにある浜から砂と貝殻の破片が流入し、それが堆積したものだと考えられる。神風の正体は台風であり、その証拠は水底に眠っていたというわけだ。

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Text by 青葉やまと