元寇の神風は吹いた? 湖底に眠っていた証拠が示すものは?

『蒙古襲来絵詞』後巻 | Wikimedia Commons

◆話題作で海外にも認知
 史実とも神話とも取れるミステリアスなこの通説は、いま海外の若者のあいだで注目を浴びている。きっかけは2020年7月にリリースされたプレイステーション4向けアクションゲーム『Ghost of Tsushima』の世界的大ヒットだ。米スタジオが開発したこのタイトルでは、まるで時代劇のように美しい対馬を舞台に、プレーヤーは異端のサムライとなって島を元軍から奪還する。

 ゲームの主人公はまるで神風の化身のような存在であり、このことが海外のゲーマーたちが元寇や神風などに興味を持つきっかけとなっているようだ。同作でクリエイティブ・ディレクターを務めたフォックス氏は米バラエティ誌に対し、「現実の侵攻では神風が邪魔をし、モンゴルの船団を台風で沈めた。(一方、ゲームでは)我々の主人公は台風ではなく、一人の男だ。そこで我々は彼の刀に烈風の紋様を施し、この変更を象徴させた」と開発の経緯を明かしている。元寇から対馬を護ったと言われる神風の役割が、プレーヤー演じる主人公に託されている。

 また、作品の特徴である独創的なナビゲーションシステムは、非公式に「ディバイン・ウインド(神風)」の名で呼ばれている。USゲーマー誌は、黒澤映画など日本の時代劇にヒントを得て開発されたと解説している。そのため実際の神風と直接関係があるわけではないものの、その名称から主人公を護る風をイメージするプレーヤーは多いようだ。このように『Ghost of Tsushima』によって、伝承上の神風が一躍脚光を浴びることとなった。

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Text by 青葉やまと