蚊の恐怖と、遺伝子操作というパンドラの箱

James D. Gathany / Wikimedia Commons

 フロリダ州の関係者の頭を悩ませているのはマラリアを運ぶハマダラカ属ではなく、デング熱ウイルスを運ぶネッタイシマカ属の蚊だ。記事によれば、「病原菌を運ぶ蚊は、蚊全体の1パーセントだが、フロリダキーズ・モスキート・コントロール当局は蚊との戦いのために毎年100万ドルもの予算を組む」必要があるとのことなので、当局にとっては蚊のコントロールは死活問題である。

 この決定に対して環境保護団体などは、「税金と政府資源を使って、ジュラシック・パーク実験をしている」と非難。また、蚊が鳥に捕食されていることを考えると数が大幅に減ったり、万が一にも絶滅した場合は自然界の食物連鎖に大きな影響をもたらす可能性が否めない、控えるべきだと訴えている。

 蚊全体の1パーセントに向けての対処法として考え出された方法だが、確かに、実際に自然界に与える影響は未知のものだ。成功すれば人間の科学の勝利。失敗すればまさにパンドラの箱が開くことになる。そしてこの動きは、人間と蚊の種としての生き残り戦争が本格的に始まったということかもしれない。

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Text by 西尾裕美