文化戦争の新たな武器となる剽窃問題 米大学長の辞任から広がる論争

米ハーバード大学長を辞任したクローディン・ゲイ氏|Steven Senne / AP Photo

 剽窃(ひょうせつ)問題(plagiarism)は、特にアカデミアの世界においては非常に重要視される問題の一つであるが、この話題がいまアメリカにおいて、にわかに文化的論争を巻き起こしている。

◆ハーバード大学学長辞任の波紋
 今月2日、クローディン・ゲイ(Claudine Gay)がハーバード大学の学長を辞任することを発表した。ゲイは388年の歴史がある同大学初の黒人かつ史上2人目の女性の学長ということで、就任時は大きな期待が寄せられたが、その在任期間はわずか6ヶ月と、ハーバード史上最短となった。反ユダヤ主義に関する議会証言において、大学キャンパスでの反ユダヤ主義に対して抗う姿勢を明確に示さなかったことが、直接的に今回の辞任につながったが、同時に人種差別的な立場を取る保守派の活動家クリストファー・ルフォの告発により、ゲイの剽窃問題も浮上した。

 さらにゲイ追放に関与した重要人物の1人が、資産家で投資家のビル・アックマン(Bill Ackman)だ。ハーバード大学出身のビリオネで、過去に大学に寄付をした際にトラブルがあったことも指摘されている。アックマンは、大学キャンパスでイスラエルの暴力に反対するプロテストに対して、ゲイが強く非難しなかったことをきっかけに、X(旧ツイッター)を通じてゲイの学長としての資格についても疑いをかけるような個人攻撃を行った。

 一方で、ゲイの辞任後、今度はアックマンの妻、ネリ・オックスマン(Neri Oxman)の剽窃問題が告発された。オックスマンはマサチューセッツ工科大学(MIT)の元教授で、ビジネスインサイダーがいくつかの盗用ケースを告発した。これに対しアックマンはXに、高等教育における問題を指摘するという自分の行動が、家族に対する攻撃につながったことは残念だとコメント。またMITの教員やビジネスインサイダーの社員に対しても剽窃問題の調査を行う意思を示した。

Text by MAKI NAKATA