今年の英単語「オーセンティック」と「リズ」の共通点とは

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◆プレイフルな若者言葉の「リズ」
 そして、もう一つの今年の単語が「リズ」だ。リズは、メリアム・ウェブスターでも検索上位に上がった単語の一つで、イギリスのオックスフォード大学出版局が選ぶ今年の単語に選ばれた。リズ(rizz)の語源はカリスマ(charisma)だとされている。オックスフォード大学出版局によれば、リズは、スタイル、魅力などの意味で、ロマンティックもしくは性的な関係にあるパートナーを魅了する力だと定義されている。名詞として使われるほか、「rizz up」などといった形で、魅了する、誘惑するという意味の動詞として使われる。

 リズは、ユーチューバーのカイ・セネット(Kai Cenat)が2021年ごろから使い始め、TikTok(ティックトック)など若者の間で人気のあるSNSを通じて広く拡散された。オックスフォード大学出版局の解説によると、今年の6月に人気俳優のトム・ホランドが使ったことで、使用頻度のピークを迎えたとのことだ。11月には、デートアプリのティンダーが「リズ・ファースト・リデザイン」として新しいUIを発表した。

 リズは、パートナーを誘惑する力という意味において、オーセンティックさとは真逆のようなニュアンスも感じられなくはないが、逆にオーセンティックさこそがリズの一つの要素なのかもしれない。どちらも個人の魅力に関する単語であることは興味深い。「今年の言葉」としてある意味権威づけられることによって、オーセンティックやリズは常套句となり、徐々に使われなくなっていくのかもしれないが、個のあり方(自己表現、メンタルヘルス)やアイデンティティは、今後、ますます重要度が増していく話題なのかもしれない。

Text by MAKI NAKATA