トコジラミ(南京虫)被害増のフランス、何が起きているのか? パリ市が政府に対策要求

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◆国際的に増えるトコジラミ
 言いかえると、これは海外の問題ではないのだ。実際日本でも、一時期ほぼ姿を消していたトコジラミが2000年代から増加している。パンデミック中は相談件数が減ったものの再び増加し、昨年2022年にはコロナ禍前の水準に戻ったという(産経新聞、6/20)。さらに厄介なのは、ここ10年ほどの傾向として、従来の殺虫剤成分が効かないスーパートコジラミが増加しているという点だ。

 ちなみにトコジラミは、シラミではなくカメムシの仲間だ。カメムシよりはずっと小さく、成虫でも体長は5~8ミリしかない。とはいえ、肉眼でしっかり目視できる大きさだ。日中は見えないところに潜んでいるが、暗くなると活動し、ヒトや動物の血を吸う。この時、血液凝固を避けるために出すトコジラミの唾液にアレルギー反応を起こすことで、激しいかゆみや発疹が現れる。ただし、その反応はすぐに出るとは限らない。体内で抗体が形成されているかどうかにもよるが、1日~数日経ってから症状が強く出る例のほうが多いようだ。

 実は、筆者もつい最近イギリス・ロンドンのホテルでトコジラミの被害に遭った。これまで45ヶ国以上を旅してきて、なかには衛生的とは言えない施設に泊まった経験もあるのに、まさかロンドンで初めてのトコジラミ被害に遭うとは思わなかった。

 筆者の場合も被害に遭った数日後から、症状が強く出た。赤く膨れ上がった患部が熱を持ち、かゆみより痛さが勝るほどで、夜もよく眠れなかった。幸い、トコジラミの咬傷が引き起こす感染症はないとされるが、噛まれずに済むのならそれに越したことはないだろう。

トコジラミに噛まれて腫れ上がった筆者の首筋

 また、何よりもトコジラミを出先から自宅に持ち帰らぬよう、十二分に注意したい。メスのトコジラミは毎日5~6個の卵を産み、繁殖力が非常に高く、一度生息が拡大すると、駆除にはプロの介入を要することが多いのだ。

Text by 冠ゆき