トコジラミ(南京虫)被害増のフランス、何が起きているのか? パリ市が政府に対策要求

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◆オリンピックまであと一年を切ったパリ
 これらの騒動をきっかけに、フランスではSNSで「#トコジラミ」がトレンド入り。多くのメディアがトコジラミ対策や駆除方法に関する記事を出すなど、トコジラミへの注目度は上がったままだ。

 特に来夏オリンピックを控えるパリ市はこの問題を重視。9月28日、「トコジラミは公衆衛生上の問題として宣言されるべきだ」とボルヌ首相に公式書簡で訴える運びとなった。フランス政府もまたトコジラミ問題を軽視しておらず、ボーヌ運輸大臣が29日、翌週にでも交通事業者を集めた会議の場を持つ予定だと発表したところだ。

◆10世帯に1世帯にトコジラミ?!
 トコジラミ(南京虫)とはいつの時代の話だと感じる人も多いかもしれない。実際フランスでも、1950年代にはほぼ駆除されていなくなったと考えられていた。ところが1990年代からその数は徐々に増加。2017~2022年になされた国立食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の調べでは、国内10世帯のうち1世帯にトコジラミが見られるというショッキングな報告がされている

 最も大きな原因は、国際的な人の往来が増えたことだと考えられている。2019年に大きく増加したトコジラミの報告が、コロナ禍において激減したこともこれを裏付ける。だが、新型コロナウイルスとの共存政策をとる国が増えた今、国際的な往来は世界的に増加傾向にある。つまり、トコジラミの拡散も助長されるわけだ。

Text by 冠ゆき