政府がネットを遮断するとき イラン、スリランカ、セネガルの例から考える

イラン首都テヘランでのデモ(2022年9月21日)|AP Photo

 人権擁護団体のアクセス・ナウが2月に公表した報告書によると、2022年に当局が意図的にインターネット接続を遮断した回数でインドが5年連続で首位となり、年間84回を記録した。そのうち隣国パキスタンと領有権を争うカシミール地方で49回ネットアクセスが遮断されたという。次いで、ロシアによる侵攻に直面するウクライナで22回、2022年秋に20代の女性が警察に拘束された後に死亡し、それに反発するデモが全土に広がったイランでは18回を記録した。こういった背景には何があるのだろうか。いくつか事例をあげてみてみたい。

◆2019年4月のスリランカ同時多発テロ
 そして、抗議デモではなく、大規模テロの際も政府がネット遮断を行ったケースがある。スリランカでは2019年4月19日、最大都市コロンボなど国内8ヶ所で、高級ホテルやキリスト教会が標的の同時多発テロが発生し、260人あまりが犠牲となった。日本人1人も巻き込まれた。

 事件後、スリランカ国内ではバスや電車など公共インフラが混乱し、同国政府は国家非常事態宣言や夜間外出禁止令を発出。さらに実行犯がイスラム過激組織の関係者だったことから、国内でのイスラムコミュニティへの圧力が強まり、宗教・民族間の対立感情が高まった。その際、政府は混乱を抑えるため、一時的だったがインターネットへのアクセス制限を行った。

Text by 本田英寿