米大学の人種優遇「違憲」でどうなる? 25年前に禁止した州ではどうなったのか

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 アメリカ最高裁は6月28日、大学入学者選抜の際に「人種を考慮に入れることは違憲である」という判断を下し、アメリカで長く続いてきたアファーマティブ・アクションが事実上の終焉(しゅうえん)を迎える結果となった。アメリカの高等教育と、ダイバーシティ(人種多様性)の実践を含む人種問題の今後は、いったいどのような方向へと進んで行くのだろうか?

◆長年の人種差別是正のための優遇措置
 アファーマティブ・アクションとは、大学や企業におけるダイバーシティを増加するために、アフリカ系やラテン系の学生の入学を優遇するアメリカならではポリシーである。これは連邦政府との契約や下請契約を行う企業で「人種や肌の色、宗教における差別を禁止する」という1965年当時のリンドン・ジョンソン大統領の大統領令に由来する。先祖の多くが奴隷としてアメリカに連れてこられた歴史を持つ黒人系アメリカ人は、1960年代まで公民権も持たずに人種差別を受けており、一部地域では白人系アメリカ人と同じ学校へ通うことも許されていなかった。そんなアメリカの歴史背景に考えると、人種差別により教育や職業の場で長年明らかに不利な立場に置かれてきて、有名大学や有力企業における人種的割合が極端に低かった黒人系アメリカ人が優遇措置を受けることは当然の成り行きである。

 しかしアファーマティブ・アクションは主に共和党支持者などから「白人系やアジア系を逆差別するポリシーである」としてこれまでも槍玉に挙げられてきた。しかし、2003年には最高裁が「入学選考時に人種を考慮することは合憲」としたことから、特にこれまで学生の人種多様性が低かったアイビーリーグ大学をはじめとする多くの高等教育機関で幅広く実施されていた。しかしトランプ前大統領時代に3人の保守判事が仲間入りした最高裁は現在では保守派が優勢となり状況は一変。2022年に最高裁で中絶の権利が覆された際と同様に、今回のケースも判例を覆すため、保守派により計画的に進められてきたものである。

Text by 川島 実佳