途上国を直撃する物価高パンデミック 生活必需品高騰で社会混乱

スリランカ首都コロンボの大統領公邸のデモ隊(7月20日)|Rafiq Maqbool / AP Photo

 ロシアによるウクライナ侵攻は世界的な物価高に拍車をかけ、世界各国の市民生活に大きな影響を及ぼしている。我々は米中による戦略的競争、ロシアによるウクライナ侵攻など、大国や先進国の問題に集中しがちだが、物価高はグローバルサウスと呼ばれる途上国に深刻な影響を及ぼしており、抗議デモや暴動など世界各地で治安悪化を誘発している。とくに、生活必需品の高騰が人々の怒りに火をつけている。

◆物価高騰で社会混乱が拡大するペルー、スリランカ
 南米のペルーでは4月、ウクライナ侵攻によって小麦や石油の価格が急騰し、これに耐えかねた市民たちによる抗議デモが全土に拡大した。抗議デモ参加者のなかには治安部隊と衝突するだけでなく、施設を放火したり、商店で略奪行為を行うなど過激な行動に出る人々もみられ、公共交通機関がほぼ停止し、学校も休校となった。これによって、ペルー政府は市民の行動を規制する非常事態宣言を発令する事態となった。

 また、インド洋に浮かぶスリランカでも同様に物価上昇や燃料不足などで市民生活に深刻な影響が生じ、市民が政府に対する抗議デモを行い、一部過激化した市民が警官隊と衝突するなどした。スリランカではいまでも停電や物価高騰、食料・ガソリン・燃料などの生活必需品不足で混乱が続いている。

 そのようななか、辞職する直前にラジャパクサ大統領が7月13日、国外に逃亡。スリランカ議会は20日、経済危機による混乱で辞任したラジャパクサ氏の後任にウィクラマシンハ首相を新たな大統領に任命した。ウィクラマシンハ氏の任期は、ラジャパクサ氏の残りの任期となる2024年11月までとなる。だが、燃料不足や物価高などの社会混乱は依然として続いており、すでにウィクラマシンハ氏の大統領就任に反発する抗議活動も発生しており、新大統領就任が経済危機の転機になるかはまったく不透明な情勢だ。英外務省は7月に入り、スリランカへの不要不急の渡航を控えるよう国民に呼びかけた。

Text by 本田英寿