「避妊と同性婚も見直しを」米最高裁判事 中絶の権利の次の標的

クラレンス・トーマス最高裁判事(2021年4月)|Erin Schaff / The New York Times via AP

◆アメリカ人6割近くが最高裁判決に反対
 そのトーマス判事の妻で白人のバージニア(ジニ)・トーマス氏が超保守派運動家であることはアメリカではよく知られた事実だ。そのジニ夫人が1月6日の国会議事堂襲撃事件計画に関わっていたことはトランプ氏側近とのテキストメッセージのやり取りなどからすでに明らかになっており、今後ジニ夫人が1月6日委員会により証人として召喚される可能性はほぼ確実と見られている。しかしトーマス判事は、ジニ夫人の1月6日事件参加という事実があるにもかかわらず、この件に関する裁判で退いていないばかりか、今回のロー対ウェイドやほかの権利の見直し要求などで、最高裁判事として公平な立場を貫いていない。

 民主党議員のなかにはトーマス判事や、最高裁の指名承認公聴会で「ロー対ウェイドは長い間続く最高裁の判例であり、覆さない」と嘘をついたニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノー、エイミー・コニー・バレット各判事の弾劾を呼びかける声も高まっている。また同時に高まっているのが、現在は保守派に傾いている最高裁のバランスを取るため、最高裁判事を増やすという議論である。どちらにしても、民主党が今年11月の中間選挙において上下両院で過半数を占めなければ実現は困難である。

 しかしここ数ヶ月間、インフレやガソリン価格高騰で支持率が下がっていた民主党が、ロー対ウェイドの件で再び盛り返す可能性は高い。6月27日の米公共ラジオNPR、公共放送PBS、マリストによる世論調査では、アメリカ人の56%がロー対ウェイドを覆すことに反対、40%が賛成という結果が出ている。

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Text by 川島 実佳