米テキサス、妊娠6週以降の中絶禁止 全米でも中絶制限の動き

パクストン・スミスさん|Juan Figueroa/The Dallas Morning News via AP

 テキサス州知事のグレッグ・アボット知事(Gov. Greg Abbott)が先月署名した中絶を事実上禁止する法案に対し、同州の高校生が卒業式総代スピーチで強い抗議のメッセージを発信。そのスピーチがメディアを通じて広がり話題になった。通称ハートビート法として知られるこの法案は、胎児の心音が確認できるようになる時期、早ければ妊娠6週間の時点以降の中絶を禁止するというもの。この時期、多くの女性は妊娠に気づかない場合が多いため、事実上、中絶全面禁止の法律として理解されている。高校生の訴えと、中絶法案の実態とは。

◆ある高校生の反対表明スピーチ
 テキサス州ダラスの高校生パクストン・スミス(Paxton Smith)は、卒業式の総代スピーチで用意していた承認済みの原稿を読むかわりに、同州で少し前に署名された、中絶をほぼ全面的に禁止する法律に対しての抗議メッセージを発信した。もともとはメディアやテレビについて話す予定だったという。彼女は友人らには変更を打ち明けなかったが、3人の親にだけは事前に伝えていた。スミスのスピーチは、メディアを通じて広まり話題になった。ヒラリー・クリントンはツイッターで彼女の勇気ある発言に支持を示した。大御所テック・ジャーナリストのカラ・スウィッシャー(Kara Swisher)は自身が共同ホストのポッドキャスト『Pivot』で、スピーチの一部を紹介し、多いに賞賛した。

 スピーチは約3分と短いが明確なメッセージが発信されている。テキサス州で署名された新たな法案によって、多くの女性が妊娠に気がつかない6週間という短い期間、そして妊娠を続けるかどうかを総合的に自分で判断する前に、その後すべての人生に影響する判断を「他人」に下されてしまうということに対する強い批判のメッセージ。女性である自分と、テキサス州の多くの女性たちに影響する法律に対して、権利を訴えるために声をあげずにはいられなかったという。「We cannot stay silent.(黙っていてはならない)」と彼女はスピーチを締めくくった。学校側にとっては必ずしも歓迎すべきイベントではなかったようだが、スミスは無事卒業し、テキサス大学オースティン校に進学する予定だ。

Text by MAKI NAKATA