アメリカ23州で中絶禁止へ 1973年「ロー対ウェイド」の終焉

人工妊娠中絶の権利を訴えるデモ参加者(ワシントンDC、5月14日)|Kevin Wolf / AP Photo

 世界一の経済大国であるアメリカは、実は女性の権利に関しては後進国の一つだ。その大きな理由として、保守派が米国憲法に定められているにもかかわらず政治と宗教を切り離せず共和党政治家に圧力をかけることや、または保守派自身が共和党州から出馬して当選し、国政や世情に影響を与えていることがある。

 1973年に「ロー対ウェイド」と呼ばれる画期的な裁判において、最高裁判所が女性が妊娠中絶手術を受ける権利がプライバシーの権利に含まれると認める判決を下し、その後およそ50年間にわたり、それはアメリカでは当然の権利のように全国的に行使されてきた。しかし、2017年にドナルド・トランプ氏が大統領に就任し、3人の保守派判事を最高裁判事に指名して保守派判事が過半数を占めるようになったことから、その雲行きがだんだんと変わってきた。テキサスやミシシッピをはじめとする共和党州で中絶の権利を大幅に縮小する動きが活発になり、それを最高裁が容認するという流れができてきたのだ。

 このままではいつか「ロー対ウェイド」判決が覆されるのではないか、と危惧されるなか、5月2日に大事件が起きた。米政治サイト『ポリティコ』に、過去の判決を覆す前代未聞の主旨が書かれた、判事の多数派意見をまとめた草案がリークされ、報道されたのである。

◆全米23州で中絶禁止へ
 ポリティコの報道によると、保守派のサミュエル・アリト判事は草案で「ロー(の判決)は始めから実にひどく間違っていた」「憲法には中絶の権利に関する表記はない」「我々はローとケイシー(1992年の同様の判決)が覆されなければならないと判断する」と述べ、中絶の問題は米国憲法ではなく、各州から選出された議員により決められるべきと述べた。これはもちろん最高裁自身が中絶を禁止しているわけではなく、中絶が是か非かを決める権利は各州、および米上下院議会に属するという意味である。

Text by 川島 実佳