性暴力、窃盗目的ではない? 謎の注射攻撃、仏で頻発 麻薬検出のケースも

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◆初の容疑者特定
 6月最初の週末には、全国各地の音楽フェスやテレビの屋外音楽番組収録中に、ニードル・スパイキングの被害が相次ぎ、そのうち約30人が被害届を出した(TF1、6/6)。また、被害者らの証言により、複数の容疑者の尋問も行われた。そのうち南部トゥーロンでは注射針を持っていた人が7人、シリンジを持っていた人が1人だったが、いずれも容疑を否定している。

 全国各地で頻発してことから見て、実行者が複数いるのは確かだが、入院に至るほど強い症状の出た被害者もいれば、まったく症状が出なかった者もいて、それぞれの被害のつながりは不明だ。注射を打たれたのちレイプに至った例もわずかにあるが、ほとんどの被害はニードル・スパイキングで終わっており、性的暴行や窃盗を目的としたものとは考えにくい。だが、たとえ注射針を刺されただけであっても、同じ針が別の犯行でも使われていれば、衛生的懸念は大きい。

 奇怪な現象であるため、SNSのチャレンジに端を発する可能性を指摘するメディアもあれば、ただの集団ヒステリーではないのかとツイートする人も出ている。

◆麻薬を混ぜたシャンパンの販売
 誰が、何のために、が見えてこない不気味な犯罪は、ニードル・スパイキングだけではない。LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンは、世界有数の高級シャンパン製造会社だが、同社のシャンパンにMDMA(エクスタシー)が混ぜられ市場に出回る事件が起きている。

 最初に発覚したのは2月で、これまでにオランダで4人、ドイツで約10人が被害にあっており、ドイツでは死者もひとり出ている(ルクセンブルク食品安全局、6/7)。原因となったモエ・エ・シャンドンのマグナム瓶は、その後の調査でロット数が明らかにされたが、いまのところそのほかのロットが安全だという保証はない(ミディ・リーブル紙、6/7)。ベルギー、フランス、ルクセンブルクなど各国の食品安全当局は、これ以上の被害を食い止めようと、特定されたロット数やMDMA混入シャンパンの見分け方をウェブ上で公開している。

 モエ・エ・シャンドンは2月の段階で被害を発表しており、今回の事件は、何者かが意図的にMDMAを同社のシャンパンに混ぜて販売したものと考えられる。実際、件のマグナム瓶シャンパンは、どれもネットなどを介した個人販売で市場に出回ったものだ。

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Text by 冠ゆき