「もうたくさん」声を上げる南アフリカの女性たち “国家危機以上”女性への暴力と殺人

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 ジェンダーに基づく暴力撤廃に向けたキャンペーンが世界各地で、昨年11月25日(女性に対する暴力撤廃の国際デー)から12月10日(人権デー)まで、16日間にわたって開催された。南アフリカ政府は16日間のキャンペーンを365日に延長することを決定した。「もうたくさん – ジェンダーに基づく暴力を撤廃する365日」と題されたキャンペーンは12月10日に始まった。新たなキャンペーン開始について、マイテ・ヌコアナ =マシャバネ女性児童障害者大臣は「国民が一丸となり、16日間だけではなく、毎年1年365日間、私達の役割を果たすことが必要です」と述べた。

◆「国家危機以上」の問題
 この背景には、昨年南アフリカ各地で行われた、性犯罪に抗議する大規模なデモがある。立て続けに報道される女性に対する暴力や「フェミサイド」(女性殺人)に対する抗議が理由だ。8月にケープタウン大学に通う19歳の学生ウイネネ・ムウェティアーナさんが郵便局の職員にレイプされた後、殺害され、大きな注目を浴びた。それを発端に、南アフリカでは#AmINext(次は私)、#EnoughIsEnough(もうたくさん)などのハッシュタグを使い、公共の場やソーシャルメディアでジェンダーに基づく暴力と殺人(Gender-based Violence and Femicide = GBVF)問題に関する議論がされている。

 ラマポーザ大統領も「女性に対する暴力は国家危機以上である。これは私たち共通の人類に対する罪である」と9月に行われた国民演説で述べた。

◆世界平均を大きく上回る女性への暴力
 世界保健機関(WHO)が2013年に発表したデータによると、世界中の女性の3人に1人以上が性的暴力か身体的暴力の被害経験者であるという。また、多くの場合は親密なパートナーによる暴力で、世界中で殺害された女性のうち38%が、パートナーによって殺されている。

 南アフリカ警察によると、2018年4月から2019年3月の1年間で女性が殺害された事件は2,771件起きている。また女性に対する性犯罪は36,597件におよび、そのうちレイプは30,626件であった。つまり毎日約100件以上のレイプを含む暴力が女性に対して行われていることになる。レイプ事件を届け出る被害者は氷山の一角と考えると、実際の数は統計データを大きく上回るだろう。また恐ろしいことに、国内レイプ事件の44.7%は未成年の子供に対してである。

 上記の警察のデータでわかるように、南アフリカでは女性に対する殺人事件が3時間ごとに1件起きていることになる。これは世界的に見ても大変高い水準である。南アフリカ統計局が2018年に発行したレポートによると、2015年には若干改善したが、2010年の女性殺害率は世界平均の5倍だ。WHOの2016年のデータによると、女性10万人当たりの殺害者数が12.1人と、世界でもホンジュラス、ジャマイカ、レソトの次で4位に該当する。

Text by 中川沙和

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