食料、生活インフラ、外出禁止… キエフ在住日本人に聞く日常生活

3月19日のキエフ市街の様子|Rodrigo Abd / AP Photo

◆キエフを去る人、キエフに残る人
 国民の4分の1近くが避難したと見積もられている現在、江川氏も身の回りからある程度人が減ったと感じている。職場に関していえば、10人中約3人が国外へ、4人が国内西部へ、残りの3人がキエフに留まっている印象だ。

 もともとウクライナ西部の住人は、ポーランドなどEU諸国に出稼ぎに出る人が多い。そのため、親戚を頼るなど足がかりもあり、また地理的にもEUに近いため避難しやすい面がある。だが、東部や南部、首都の住民から見れば、最も避難を必要としているのは西部のウクライナ人ではない。一番助けを必要としている人には助けが届いていないのではないか、というもどかしさも江川氏は抱えている。

 キエフに留まる人の理由は人それぞれだ。健康上の問題で長時間の移動に耐えられないという人もいれば、飼っている犬を見捨てられないからという人もいる。タイミングを逃したと感じる人もいれば、疎開したとしてもそこが安全とは限らないと考える人もいる。

◆避難のその先
 避難するべきかどうか。するとしても、いつどのタイミングでどこに避難すべきか。正解のない問いが常に頭から離れない。

 その一方で、国を守るために命を賭けて戦う人が振り向いたとき、後ろには誰もいないという状況にはしたくないという思いもある。避難は決してゴールではない。いつ戻るのか、どう戻るのか、避難民が増えるなかどのように国を維持し、国民文化を保持するのか。人が流出して国が空洞化すれば、ある意味、敵の思うがままではないのか。

 移民援助はひとつの支援方法で、それももちろん大切だが、ゼレンスキー大統領の演説にもあったように、その先にある「復興」を見据えることを忘れてはならない。

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Text by 冠ゆき