米国で老朽化インフラが放置される理由 築50年の橋崩落

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◆財源不足で悪化 新法に期待
 修理が必要とされた橋は、たとえ州のリストの一番上に入れられたとしても、必要な資金ができるまで何年も待たねばならない場合があるとノースイースタン大学工学部のジェローム・ハヤール氏は話す。技術者たちはできる限りの修理に取り組んでいるが、橋を含め老朽化したインフラ修理に投入される資金が不十分なことが問題だとしている。(AP)

 米国道路交通建設者協会の関係者は、以前よりも状態が悪いと報告された橋の数は減ったが、修理のペースは氷河期的に遅く、追いつくには専用の財源が必要だとしている。ペンシルベニア州でも状態が悪いとされる橋の数は3200本で5年前より減ったが、重量制限、交通制限が必要なレベルにまで劣化した橋は2100本以上あるという。(同)

 非営利団体PIRG(公共利益調査グループ)の環境キャンペーンディレクター、マット・カザレ氏は、各州が新しい高速道路に多額の投資をしてきたのとは対照的に、多くの橋はあまりにも長い間状態が悪いまま放置されてきたと述べる。インフラ投資法で既存のインフラの修理維持を進めることが求められるとした。(アメリカン・ジャーナル・オブ・トランスポーテーション

◆資金不足に反論 コストや効率の問題か?
 一方、ニューヨーク・ポスト紙に寄稿したシンクタンク、マンハッタン研究所のブライアン・リードル氏は、高速道路、道路、橋への支出は2007年から2019年の間に増加し、交通や水インフラに対する支出もGDP比で見ればここ30年の平均をわずかに下回る程度で、資金調達のレベルは健全だと主張する。橋の崩落を国家的危機の一部としてセンセーショナルに取り上げたいところだが、アメリカのインフラは実は着実に改善されていると述べている。

 同氏は、バイデン政権のインフラ投資法の新規支出のうち道路と橋に割り当てられたのはわずか20%で壮大とは言えないとし、必ずや期待を裏切ることになると述べる。さらに、インフラ整備を妨げているのは実は支出の度合いではなく過剰な役所仕事や官僚主義だと指摘。法律や協約による人件費の高さ、環境影響評価にかかる時間の長さ、プロジェクトに関する訴訟の長さなどを問題視している。

 同氏はまた、連邦政府の投資は民間企業に比べ半分のリターンしか得られず、時にはマイナスになることもあるという米国議会予算局の分析を紹介。インフラ改善に注力する議員たちは、無駄、遅れ、コスト超過の改革から手をつけるべきだとしている。

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Text by 山川 真智子