イーロン・マスク氏「今年1.2兆円納税」 税金逃れ批判のなか、マスク氏の心中は?

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◆富の集中の象徴? これまでは納税回避
 フォックス・ニュースは、最近ナスダックが発表した貧困国のリストに言及。もしマスク氏が自身のツイートした額を納税するとすれば、ブルンジ、南スーダン、ソマリアといった国家の2021年の予測GDPを超えてしまうと述べている。これは個人の納税額が一国の生み出す付加価値(儲け)を上回るということだ。

 マスク氏は世界一の金持ちとフォーブス誌に認定されているが、ジェフ・ベゾス氏やマイケル・ブルームバーグ氏らと同様に巨額の富に見合った所得税を払っていないと、調査報道を行う報道機関プロパブリカが報じていた。マスク氏は、2014年から2018年の間に15億2000万ドル(約1728億円)の所得を申告し、4億5500万ドル(約517億円)の税を支払った。しかしこの期間に資産は139億ドル(約1.6兆円)も増加しており、実際の税率はわずか3.27%だったことになると指摘されている。また、2018年には連邦所得税は全く支払っていなかった。

 CNBCは、今年マスク氏が多額の税を支払うことにした理由として、民主党の「ビルド・バック・ベター」法の下、より高い税率を課せられる可能性があったからだと指摘している。

◆納税回避批判に噛み付く……富裕層の主張とは
 実は今回の納税ツイートの前に、マスク氏と民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員の間で一悶着あった。ウォーレン氏は、マスク氏は十分な税金を払っておらず、「皆から金を巻き上げている」と主張。タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」にマスク氏が選出されたことに疑問を投げかけ、マスク氏を大いに怒らせていた。

 フォックス・ニュースによれば、マスク氏はそもそもの問題は、政府が金を使いすぎることだと考えているという。10月には、「(政府は)他人の金を使いきると、あなたのところにやってくる」とツイート。ウォーレン氏には、自分が多額の税金を払うことになると述べた後に、「全部一度に使わないで……あっ、ちょっと待って。もうすでにやっていたのですね」と嫌味なコメントを返している。

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Text by 山川 真智子