「文明が崩壊してしまう」イーロン・マスク氏、出生率低下に危機感「もっと子供を」

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◆コロナ禍で「ベビー・バスト」
 マスク氏は、コロナ禍での「ベビー・バスト」と呼ばれる急激な出生率の低下にも言及している。米疾病対策センター(CDC)によれば、アメリカの出生数は2019年から2020年にかけて4%減少。単年度としては約50年で最大の減少率で、1979年以降最も少ない出生数となった。これが一時的なものなのか、永続的な現象なのかは議論されているというが、ベビー・バストにより、高齢化した人口に十分な若年労働者が補充されず、経済を苦しめることになるという専門家もいる。結果として、政府の支出が増加し、高齢者の介護費用を支える労働力が減り、年金や社会保障における資金不足に陥る可能性もあるという。(ビジネス・インサイダー誌

 マスク氏はまた、超長生きはしないほうがいいとも話している。人はたいていの場合考えを変えず死んでいくとし、高齢者がいつまでも生きていれば新しいアイデアが成功しない、硬直化した社会になってしまうとしている。老化を揶揄しているわけではないが、国の重要事項を決める地位にある人々には十分な心の平静と認知能力が必要だとし、先週には「70歳以上の人が政治家に立候補するのを禁じるべきだ」ともツイートしている。(ビジネス・インサイダー誌

◆労働はロボットで補完 少子化に対応した社会へ
 マスク氏は、経済の基盤は労働であり、労働力の減少はロボットで補うことが可能と考えている。テスラの自動運転車の人工知能を使った人型ロボット「Tesla Bot」を開発中だが、実用化の具体的時期は示されていない。(電気輸送関連サイト『Electrek』)

 ノースウエスタン大学のクリスティン・パーチェスキー准教授は、少子化や出産年齢の上昇は、女性が教育や雇用の機会を得て自立性が高まり、価値観が変わってきたことが大きく影響していると考えている。アメリカの場合は、人口規模の変化に対応した新しい政策など構造的な調整が必要になるとし、具体的には保育料を安くしたり、職場の柔軟性を高めたりすることを挙げている。適切なステップを踏めば、マスク氏がいうほどの危機には陥らないのではないかという考えだ。(ビジネス・インサイダー誌

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Text by 山川 真智子