異国で「見えにくいDV」被害の日本人妻……別居後も子とともに続く苦しみ

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◆ほかの被害者たちとともに情報発信へ
 ユウちゃんへの身体的暴力は、監視員が夫宅を定期訪問しているため、いまは収まっている。だが、それは精神的な暴力に移行しただけで、ユウちゃんはカレンさんの前で泣きながら説明することがよくあるという。カレンさんだけでなく、ユウちゃんも児童保護局などの公的機関のことはもう一切信じていないそうだ。ユウちゃんは個人カウンセリングを受けてきたが、カウンセラーに「話は聞くけれど、あなたを救うことはできない」とまで言われ、絶望感を味わっている。

「会社なら退職すれば関係を断ち切れます。でも、家族の関係は、離れたからといって簡単には切れません。ユウが成人しても、夫からの精神的暴力は続いてしまうかもしれません」(カレンさん)

 カレンさんは、家庭内暴力の悪循環に陥っているのは自分だけだと思っていたが、在住国やほかのヨーロッパの国々で同じように悪循環から抜け出せられずにいる被害者たち(外国人の妻や夫、そしてその子供)と知り合って驚いた。そして、社会の制度が機能しないなら声を上げていくしかないと、最近、情報発信を始めた。

 カレンさんは、被害者たちが泣き寝入りせず一緒に声を上げていくことで何かが変わればと願いつつ、社会の不当さに負けず、ユウちゃんが少しでも幸せで健康的な時間を過ごせるよう日々精一杯生きている。

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Text by 岩澤 里美