偽造ワクチン証明書の売買、欧米で横行 提示義務化で増加

カフェで接種証明書を提示する女性(ニューオリンズ、8月16日)|David Grunfeld / The Advocate via AP

 新型コロナウイルスワクチンの接種が進み渡航が増えている欧米で、偽造した接種証明の使用が広がっている。

 8月初め、米カリフォルニア州からハワイのダニエル・K・イノウエ国際空港に到着した父子2人が、ワクチンの偽造接種証明を提示し、逮捕された。逮捕は地域の人から情報提供を受けたおかげだといい、2人とも顔と名前が公開された。現在、米連邦政府と協力して偽造接種証明の出所を特定しており、有罪となれば、2人には最長1年間の懲役や最高5000ドル(約54万円)の罰金が科せられる(米ABCニュース)。ニューズウィークによると、同州で逮捕に至ったケースは今回が初めて。FBIは、すでに3月末に偽造接種証明を購入・使用しないよう国民に呼びかけていた。

 7月には、カナダ政府が、アメリカからカナダのトロント空港に到着したカナダ市民2人が偽造接種証明を提示したため、約172万円の罰金を科した。

 ヨーロッパでは、昨年から逮捕されるケースが後を絶たない。EUのユーロポール(欧州刑事警察機構)によると、昨年11月には、仏パリのシャルル・ド・ゴール空港において偽造接種証明を旅行者に販売した男女6人が逮捕され、同年12月には、スペインで偽造接種証明を販売した詐欺師が逮捕され、今年1月には、英ロンドンのルートン空港で男性が偽造接種証明販売の容疑で逮捕された(ユーロニュース)。

◆飲食店での「グリーン証明書」義務化も要因か
 接種証明が必要な場所は、空港に限らない。イタリアでは8月6日より、レストランをはじめ、美術館やスポーツイベント会場などの文化施設に入るときもワクチン接種証明、検査による陰性証明、新型コロナに感染し回復したことを示す証明のいずれか(これら3つを合わせて「グリーン証明書」「衛生パス」「健康パス」などと呼ぶ)を提示することが義務付けられた。フランスでも、7月下旬から文化施設などで義務化されていたグリーン証明書の提示が、8月9日からはレストランや長距離列車でも義務になり、証明書の使用範囲が拡大した。

 この義務化を受け、両国ではワクチンの接種率が急上昇しているというが、ワクチンの安全性に不安を抱いたり、感染しない・重症化しないと信じてワクチンは不要だと考えたりする接種忌避派は一定数いる。

 なお、米ニューヨーク市でも、9月13日から仏伊と同様に屋内施設でのワクチン接種証明の提示が義務になり、8月16日から移行期間に入っている(提示を求めてもよい)。

Text by 岩澤 里美